LOVEが紡ぐ“愛という名の音楽”が彩る、過去と未来
10月22日(金)東京渋谷で、シンガーソングライター・LOVEが、およそ一年半ぶりにライヴ『一年半越しのResonant Graceリリースパーティー〜Road to 15th Anniversary〜』を開催。昨年5月5日に9枚目のアルバム『Resonant Grace』リリースをしたものの、コロナ禍の影響からお披露目ライヴもままならず、この日ようやく実現した。これまで毎月『ゾロ目ライヴ』と称し、ゾロ目の日にネット配信ライブを行ってきたものの、アーティストと観客が直接対面する生のライヴは格別。それはステージの幕が上がる前から、LOVEの登場に胸を躍らせる観客が抱く、柔らかくも熱のこもった空気から容易に想像ができた。
本番20分前の楽屋。
ライヴが始まると、LOVEとファン、双方の空気が一気に弾けた。笑いの絶えないMCを挟みつつ、最初の山場としておとずれたのが『オドレイ』。特にサビ部分の「歌え歌え足を踏み鳴らせ」のパートでは、実際にその場で歌いながら足踏みをしている人の姿も散見された。LOVEの歌声が会場に虹をかけたかのように場が華やぎ、その瞬間鳥肌がたった。また、福島県相馬市の子どもたちとの出会いから生まれたという『Go See The World』では、背中を押してくれるポジティブな歌詞と相まって、客席もさらにヒートアップ。誰よりも楽しそうに歌うLOVEの体から溢れるハッピーな空気が会場を温かく染み込んでいくのを感じた。
アコースティック・エレキギターに加えて、ピアノ伴奏も披露された。
一年半ぶりの喜びと鬱憤をLOVEは全17曲に込めて歌いきり、観客もまたそれを全力で受け止め、余韻に浸った。アンコールはないと知りつつ、最後の曲を聴き終えてもアンコールの拍手は鳴りやまなかった。アーティストと観客、双方が愛を与えあう温かくも尊い時間が流れていた。
ライヴ直後のLOVEに感想と、15周年を目前に見つめるその先について話を伺った。
約1年ぶりのライヴは本当に幸せな時間でした。
――久しぶりにライヴをしてみての、率直な感想からお聞かせください。
ものすごく楽しかったですが、まだまだぜんぜん歌い足らないですね。ここから千本ノックでもやりたいくらい(笑)。どれだけ練習をしても、やはり本番は本番でしか掴めないものがあるので。
――この15年の間には震災やコロナ禍など色々ありましたが、そういうことを経て、アーティストとしての表現は変わりましたか?
変わりました。震災と原発。パンデミック。確かに私が子どもの頃に描いていた世界ではないです。戦争は遠い国の出来事だったはずが、911以降、世界中でテロが生活圏に入ってきています。こんなにも平和ボケした日本でいいのかなというのが、デビュー当初の私が抱いていた音楽に対するモチベーションでした。海外の友達が多かったりして、わりとみんな早く成熟して政治の会話も当たり前にするので、そういう影響もあったのかもしれません。そんな中、アーティスト活動を通じ多くの方たちに出会う中で、私自身も色々と考えが変わりました。 今は、日本なりの成熟した大人のあり方があるんじゃないかとずっと思い続けています。
夢は、かっこいい人間に、そしてアーティストになること!
――今後アーティストとしての夢を教えてください。
明日のことすらわからないということもありますが、やっと今回のリリース記念ライヴをさせていただいたことで、また次の曲を書くエンジンになったので、まずは曲を書きたいです。ただ自分で言うのもなんですが、今回のアルバム『Resonant Grace』の完成度が高すぎて、超えるものを作れるか正直不安で(笑)。次は大変になることはわかっているので、気楽に作ろうと思います。あと、これからは大人の女性シンガーとして、ますます格好よくなっていけたらいいなと。憧れの人たちはいっぱいいるので。
――ちなみにどんな人に憧れているのですか?
ジョニ・ミッチェルとロバータ・フラックですね。私自身、もっとクールだったらよかったんですけど、ご存知の通り決めたいところでてんで決まらないっていうね(笑)。おそらくこの性格は変わらないと思いますが、とはいえ説得力が増すような格好いい人間に、そしてアーティストになれるように頑張りたいと思います。
インタビュー中は、時に自分に問いかけ、突き詰めながら丁寧に言葉を紡ぐ姿が印象的だったLOVE。鷹揚で自然体。自虐を交え、時に笑いを提供してくれる旺盛なサービス精神は、ステージでの彼女と同じだった。また、距離感を感じさせない人懐っこさがありつつも、未来を語る際に見せた真剣な表情と力強い口調に、アーティストとしての矜持も垣間見えた。
Text : Kei Osawa
Edit:Fumiya Ide
一年半越しの“Resonat Grace”リリースパーティー
〜Road to 15th Anniversary〜
1. My Name is LOVE
2. 君は僕のセンユウ
3. Blue Finch
4. オドレイ
5. Let Your Love Sing !
6. 優しさの逆襲
7. YES YES YES
8. Blossom
9. いつでも僕ら
10. 時間泥棒
11. Waiting List Of Dreams
12.「実家はもうない(仮)」※未発表曲
13. Go See The World
14. 1000日の夏
15. 共鳴 -resonant-
16. LIFE -grace-
17. 明日への自由
Bass 御供信弘
Drums 佐治宣英
飛び入り Percussion スティーヴ エトウ