LOVEのひろいばなし Vol.59「ソフトウェアと才能」

私が最初に自宅録音機材を買ったのは18歳のときでした。エンジニアの杉山勇司さんに勧めていただき、たしか秋葉原まで一緒にきてもらったんじゃなかったかしら?MboxというインターフェースとPro Toolsというソフトウェアを買ったのが最初です。
Mboxは縦型のおしゃれなブルーグレー。当時最初に自分で買ったiMacの横に置いて接続。もちろんiMacはダルメシアン柄。やだー。カワイイ。
いずれにせよ、自宅録音、通称・宅録の基礎を学び始めたのはその頃でした。早く初めて良かったです。
マイクケーブルやギターケーブルを、インターフェースMboxにつなぎ、iMacの中でProToolsを立ち上げる。すると、「はいどうぞ、この画面押して歌ってくれたら録音しときますんで」という感じでご案内されます。さくさくとコンピュータの中に自分の歌が録音されていくことにまだ慣れず。「声、キモ」とか、「おお、なんかすごいな」などと思っていたものです。
iMacはハードウェアです、「脳みそ」そのもの。
そして、ProToolsはソフトウェア。「才能」にあたります。インストールできる音楽素材であり才能そのものです。
まず「才能」の定義ってなんなんでしょうね。
絵や音楽などのアートやスポーツだけではなく、「なんだかあなたがここいると和むわねえ」というふんわり能力から、仕事がめっさ早い管理能力、荒れ狂う海に出る漁師の状況判断能力など。私はありとあらゆる「能」は才能だと思っています。 あなたはどんな種類をお持ちですか。
英語だと才能はTalent、能力はAbilityですが、ふたつセットで「才能」じゃないかしらと私は思っています。Talentは、誰もが必ず、多かれ少なかれひとつ以上生まれつき持っているもの。能力は生まれた後に経験によって強化されますが、強化しやすい思考回路が育つ人かどうか、それも才能のうちかと。
今日、実は宅録の話じゃないんですが、宅録の話を先にします。ちょっと専門的かもしれないので、珍紛漢紛だったらごめんなさい。……うわ、ちんぷんかんぷんって漢字だとこう書くんですね。初めて知った。すごいですね。Wordの自動変換のおかげでいまひとつ賢くなった。これもソフトウェアのなせる技。物知りだね、 Word。持って生まれたお前の才能だね。
さて、ProToolsの他にも録音ソフトはあるんですけど、CubaseとかLogicとか。今まで仕事したアレンジャーさんやエンジニアさんが何を使っているかによって、私もスタジオで肩越しに眺めながら、歴代ちょこちょこと勉強させていただきました。
Cubaseは楽しかった!初心者でも視覚的にわかりやすくてワクワク。そして、Logicはもう名前からして「論理的にやってください」と言われている気がして苦手意識が働いてしまい、挫折しました。
これらの宅録ソフトウェアは、ドラムやらピアノなどの大量の音色と、それを組み立てる音楽室のようなものでできています。音楽の「素材」とそれを使う「音楽室」がセットになってくるんですね。
初期セットでも、ドラム、ベース、ギター、アンプ、キーボード、メトロノーム、ありとあらゆるエフェクターまでついてきちゃいます。これを「素材」として「音楽室」で一個ずつ並べたり切ったり貼ったりして、工作のように音楽を作るのです。弾き語りから、生バンド風、テクノまで。あなた次第!
で、実は、デスクの前に座っている私がイチから何を作るかアイデアを出しているように見えますが、「音楽室」の整理整頓具合や、使い勝手によって、特に最初の頃は結果が変わってくると思います。実は棚の中には積み木がたくさんしまってあるんだけど、目の前に折り紙があれば折り紙をする子ども、みたいなのと同じ。
見えてるものしか使わない。
「素材」がいくら豊富にあっても、持ち腐れになる状態。
なので最初に宅録を始めた頃から、私はいつも棚の中を見ることから始めていました。アップデートしたりするたびに、勝手に作業部屋が模様替えされるのをイラッとしながら棚の中を確認したり、棚自体の扉の付け替えなどがあると「勝手に引き出しつけてんじゃねーよ」などと毒づいたりもしていました。
ただダラダラ見ても忘れるので仕方ありません。「あ、あれがあった、これもあった、ウケるー」とギャル風にテンションを上げて好きなものにキラキラシールでも貼っていくのが大事です。私はドラムの棚が大好きなので、暇な時は長時間デスクに座り、ドラムの棚を開けて「やだー、このモタりビート、ウケるー」などと[fav]マークをつけていったりします。
すごいな、と思うのが、お金さえ払えば、このソフトをどんどん追加インストールできるということ。ドラムだけでもいくらでも追加ソフトはあるし、ピアノ「アリーシアキーズのピアノ」ってのまである。アリーシアの音色をあなたの楽曲にどうぞと。弾いてみると本当にそれっぽくなる。すご!っていうね。
私の音楽は自分の作品です。ですが、誰かが作った素材と能力を追加インストールして、自分の才能を強化できるのです。
さて、ここまでは音楽の話でした。応用します。置き換えていきますよ。
私の人生は自分の作品です、ですが、誰かが持ってる知識と思考を追加インストールして、自分の考え方を強化できるのです。
これが、勉強やセルフインプルーブメントってやつですね。本を読んだり、映画を見たり、疑問を持っては調べ事をしたり、試しにやってみて失敗したり、転職したり。新しいものに触れて、楽しんで、苦労して、前より楽になったり賢くなったりして。そうやって知識がだんだん経験値になって自分のものになっていく。これはもはや快感です。
さて、私たちは今、同じ「2022年」という作業場にいます。それは音楽室ではないかもしれないけど、あたりには棚がいっぱいあって、引き出しもあって、多分たくさんの過去の偉人たちによる知識や、最新の職人たちが作ったいろんな分野の素材がしまってあります。無限大。
そしてあなた自身の人生自体が知識の宝庫だったり、隣の人は持っていない知恵や感性を持っていたりします。それを「才能」と私はあえて呼びます。「すごいね!何持ってんの?聞かせて!見せて!」って感じ。
ですが、今作業場の大きなデスクには、「戦争、食糧危機、異常気象、世界的飢餓、日本での政治と宗教、国葬の是非」などというとんでもない素材が場所をとっていて、私たちの多くは自分の才能をのびのびと生かすどころか、言葉を失い、ドン引きしています。
もし私が未熟な大人だったら、目の前に折り紙があった子どもと同じように、これを素材にして何かを作り始めると思います。おそらく、差別や怒りや虚無感、分断や敵対などです。
ちなみに普段私が楽しんでいる音楽室では「自主的に買ってインストールして、強化している私の人生!」だったはずのもの。まもなく、向こうのほうから「特定のソフトウェアをね、みんなに強制インストールしてあなたの才能を書き換えちゃおうと思うの!もちろんみんなの自腹だよ!」というとんでもないものが近づいている感覚が、最近はあります。それが誰なのかは、私にはもはやわからないです。すでにじわじわと始まっているのかもしれないです。これにどう対処するかを最近よく考えていました。ファイヤーウォール的な防御じゃない気がする。
というわけでですね、話は戻りますが。またコンピュータの話です。
私、今年に入ってコンピューターを新しくしたんですね。Mac Miniにしたの。早くて最高。いやー、もうね、このMac Miniでは他の仕事はやらないことにしまして。他のソフト、なるべく入れておりませぬ。音楽をつくるためだけのコンピューター!
Pro Toolsも入れ直しました。前のPCの調子が壊れた原因になったかもしれないソフトは、全てアンインストールしました。確信がなくても、疑いがあるだけで全部捨てました。以前お世話になった方にもらったソフトとか、心底もったいないな、と思ったりしました。
ですが、プロデューサー慎二郎氏の言葉に突き動かされたのです。
「俺たちが作る音楽を大事に誰かに買って欲しいんだよね。てことは、それを作るために使ってるソフトウェアを、俺たち自身が大事に買わないといけないよね。ソフトウェア自体、誰かが作った才能の塊なんだから。俺、若い時から、お金がなくてもソフトにちゃんとお金を払ってきたの。高くても背伸びして買ってた。作品にウイルスとかバグが入る隙や、ストレスを自分を与えないためにも、中途半端なものはアンインストールするといいよ。そういう時期があなたにも来たのかもね」という内容の言葉でした。
アンインストールすることで、守れる「才能」があるとは知りませんでした。
これ、思考回路にも同じことがいえるはず。何を頭に入れて、何を追い出すのか。今日のこの例え、少し難しいかったかもしれないですが、伝わりましたでしょうか。
もう一度言いますが、私たちは今、同じ「2022年」という作業場にいます。それは音楽室ではないかもしれないけど、あたりには棚がいっぱいあって、引き出しもあって、多分たくさんの過去の偉人たちによる知識や、最新の職人たちが作ったいろんな分野の素材がしまってあります。無限大。なるべくいろんなものを引っ張り出しましょう。
ゴミも腐るほど出てくるタイミングなのでしょう。捨てましょう。アンインストールの大事さが身に沁みる今です。捨てるために触わりましょう。自分に取り込んだり、うっかり人にぶん投げるために触れてしまうことは避けましょう。
そして、棚の奥のほうに隠れていたいにしえの知恵や最新の知識を見つけたら、作業台になるべく素敵なものとして並べていきましょう。萎縮せず、あなたの才能も、どんどん出していきましょう。他の人が「あら素敵」なんつって望むなら自主的にインストールできる状態に、みんなでしてあげましょう。
そうやって、私たちは自力でお互いの才能を、一度きりの人生を、守り強化できるはずなのだと。こっからたくさん勉強しよう!とかなんとかいわれると勉強嫌いとしては気が重いのですが、2022年という作業場にいると思えば。私たち自身の才能や、いろんな能力が、試されますね。
みたいなね。
ことをね。
考えたりしてね。
-おまけ-
SOMA BLUE markerは2022年の作業台に並べることができたハッピーな素材のひとつです!是非、手に取ってください。そして、他のものをちょっとよけて、夢やら絵やら、書いて欲しいなと願っております。

今月、初めて触るソフトウェアが3つもありました。ちょっと必要にかられまして。すべて映像まわりでした。インストールしましたよ。ちゃんとお金払いましたよ。
だああ!手を出さないと決めていたのに!
まったく別で、お世話になった方が困ってらして、とある「簡単な修正編集」を頼まれたのがきっかけでした。蓋を開けたら、After Affect, Premier Proとふたつのソフトが必要になりました。
だああああああ!めちゃめちゃ難しいデータが来てんじゃないでずが!!
「音楽ソフトが使いこなせるならある程度は映像もできるはずだよ」とおっしゃっていた井上慎二郎さんを信じて飛び込みました。彼はこっそりYouTuberでもあるし、私の毎月のZOROME LIVE SHOWのカメラ周りなど、最近映像のスキルもぐんぐんと上げてらっしゃいます。一人なら無理かなと思ったんですけど、まあ頼れる方がいるなら、と。
だああああああああ!結局、兄さん忙しくて私一人でやった方が間に合う的なことになってるじゃないでずが!!!!
と夜な夜な使い方を勉強しましたが、After Effectはちょっとやそっとじゃ無理。めっさむずいやん。Premier Proは音楽編集と近い映像編集だったから、なんとか使い勝手が似てて、できました。多分プロの二倍以上、時間かければできる。
で、新曲「We Only Live Once」制作時から、「リリックビデオつくろっかー。リリックビデオくらいなら私も作れるかも〜」という話がありました。あれから数週。撮影。素材が揃う。結構いい。MVとして仕上げちゃいなよ的な流れに。で、だったらいよいよ慎二郎さんに最終的に仕上げてもらう必要があるかも。じゃあ彼が使っていらっしゃるFinal Cut Proで最初から作った方がいいのでは。
って、だああああああああ!!!ってこれまた新しいソフトじゃないでずが!!!!!!!
という7月でした。ライブもリハも3本分ありつつ、新しいソフトウェア3つ勉強しました。誰か褒めてつかあさい。