LOVEのひろいばなし Vol.49「マサのガッツポーズ」

動きのある写真、ない写真。ありますよね。

カメラに向かってガッツポーズを決める、柔らかい笑顔の男の子。その彼に、私は偉そうに上から腕を組み、なぜか半分白目を剥いて舌を出しておどけています。非常に動きがあってよろしい。なかなかとれる1枚じゃない。

「写真をとるよ」と言われてまっすぐカメラを向いて固まるのではなく、何かをやってしまう性分、この頃から健在です。

誰が撮ったか覚えてないけど、グッジョブ。私はこの写真がとても好きでした。イヤーブックに載っています。

イヤーブック、それは日本で言うところの卒業アルバムですね。ただ、アメリカンバージョンのものは卒業生だけじゃなく、その年の在校生すべてのためのものになっていて、その分分厚い。A4サイズの立派なハードカバーで作られています。毎年分、うちにあります。

私が高校2年生の年のイヤーブック、後半のページに「HALL OF FAME」名誉の殿堂、というページがありました。写真つきで見開き2ページ。

「男前賞」「かわいい賞」「キュート賞」という完全ルックス重視の賞から、「マッチョ賞」「秀才賞」「ベスト髪型賞」「おもろ賞」「ベストスマイル賞」「お洒落賞:スポーティ、クール、キュート部門」など、個性を生かした賞まで。

LIKELY TO BE GOOD PARENTS =「いい親になりそう賞」という、こんなもん完全イメージ先行やろ、という予想賞もありました。

冒頭の、動きがありまくるイイ写真ですが、こちら、MOST LIKELY TO SUCCEED =「最も成功しそう賞」に使われた1枚でした。私が腕を組んでいる、ガッツポーズの柔らかな笑顔の彼の名は伊藤正裕といいます。

高校2年生の時点で、マサ氏はすでに起業していました。だからMOST LIKELY=しそう、ではなくて、すでに成功し始めていた、と言ってもいいでしょう。

一方、私はのちにデビューする同級生バンドで学園祭で歌うなどしていた頃。ただし、本当は裏方仕事の方が好きでした。バンドも面白かったけど、生徒会メンバーとして学園祭を運営する実質的な仕事のほうが好きでした。

マサは同じく生徒会メンバー。SECRETARY(書記?)をつとめていました。穏やかで冷静ながら、推進力がある人。たかだか学園祭でも、何かしら机上のアイデアだったものが目の前でできあがっていく過程を、私たちはみな楽しみました。

そう、実現する気持ちよさ。

その後も、私の場合は、事務所を独立したり、今日ここライブを主催したり。SOMABLUE絵の具、タイル、マーカーを福島県相馬市のために作ってきたPROJECTもそうなんですが、やっぱりどこかで実現する気持ちよさを人生に生かしてきました。

そして、マサは、私の比じゃないくらい、圧倒的に急速に、何かを「実現する喜び」を追求してきたタイプだと思います。

高校卒業後、私がバンドでデビューしてそろそろ解散、と最後のアルバムを作っていた20代前半頃ですかね。マサは経済界大賞の青年実業家賞を受賞しました。え、何それ?っていうね。

10代のころ、彼がみつけた3D技術のソフトウェアは、今では世界中のあらゆる産業のウェブで活用されています。興味を生かして、知恵を絞って、最初の企業から大成功。その後、結婚して、子どもがうまれて、ジョンレノンばりの主夫やって一度海辺に引っ込んで。

でも結局また事業に返り咲いた20代中盤ぐらいから、今度はマサ自身が急成長を遂げていきます。

ZOZOSUITS、ZOZOMAT、ZOZOGLASSを開発し、ZOZOの取締役に。みなさんご存知、月まで飛んで行っちゃった起業家の前澤さんのもとでCOOにまでなっていました。

すごいなあとは思っていたものの。パンデミック最中、去年、ふとWEBで彼の新事業のプレゼンテーションを発見した私は、久々に全身の血が騒ぐほど、興奮、そして感動しました。

英語、日本語、両方でメディアプレゼンテーションがYouTubeに上がりました。1時間ちかくあってもとてもわかりやすくて明確だったもので、一気見。興味のある方は是非直接見て欲しいです。内容簡単にまとめます。

「資源が少ない日本、未来の電気問題、やばくない?」

「でも海だけはめっちゃあるやん」

「そういえば、陸から遠い洋上のほうが効率的に風力発電できるんだって」

「えー、でも海底ケーブルめっちゃ高いらしいし環境破壊するんやって……」

「だから海底ケーブルやめればいいんだよ」

「え?ほなどうすんの?」

「コンテナ型の蓄電池作って、洋上で蓄電。それを船で運んだらいいんだよ。必要なところに必要なだけ電気届けられるようにできるよ」

……え?電池と電気運搬船を作ればいいの???そんなシンプルな話???

私は目からウロコが落ちました。ほんとにシンプル。今の世界の燃料問題、そして利権問題。月の裏側にでもいって新しい資源を発掘しないと解決しないのかと思っていたら、いやいや。

「電気の燃料を運ぶ時代から、電気そのものを運ぶ未来へ」

社名、POWER X。

今、石油や天然ガスに頼っている人類は、産地から世界中へ燃料自体を運んで、それぞれ地元の発電所に持ち込み、そこからケーブルがつながるエリアにのみ送電しています。ですが、POWER Xのアイデアだと、そんな石油やら天然ガスに頼る必要がなくなります。(戦争の理由もひとつ消せるかもね)

というか、物流の順番を変えることになるんですね。無理ない方法で、無理なく作れる場所で電気を作って、電池にためて最後に物流に乗せる、という発想。

例えば、アフリカ大陸の南の方で圧倒的に安定している太陽光発電。送電したくてもケーブルが伸びる北アフリカまでが限界。ですが、コンテナ電池と運搬船があれば、簡単に海を回ってヨーロッパに運ぶことができます。問い合わせがもう多数きているそうです。

この方法の画期的なところは、必要なところに必要なだけ置ける、というところ。

欧米に比べ日本では圧倒的に普及率の悪い、電気自動車と充電スタンド。ガソリンスタンドみたいに充電スタンドを建設せずとも、このコンテナ型の蓄電池を、置けばいいのです。コンビニ、スーパー、パーキングエリア。お盆など、混雑する時は必要なだけ増やしてもいい。

そして、なにより私が感動したのは、このプロジェクトが最初から災害時の被災地復旧を想定して練られているということ。

有事の際の非常用電源としてこの蓄電池と電気運搬船を使って、人命を救う。もし東日本大震災のときに、POWER Xの船が沿岸部に存在していたらどれだけの人を救えただろう、という内なる問いかけからのスタートでもあるそうです。

日本政府は、日本における洋上風力を現在の27万kwから、2040年には4500万kwまで引き上げると発表しています。えーと、計算機に聞いたら、166倍なんですけど?あと20年で?

多分、いや、確実に。

マサの発想がそれを可能にすると思います。

って、これ、すっごいテンション上がったんだけど、私だけ?

福島をずっとみてきたから、原発の掃除と、代替エネルギーのことがずっと気になってたところに、これ。

2025年にはPOWER ARKと呼ばれる電気運搬船の第1号が製造されるそうです。あと3年。たった3年です。

Waiting List Of Dreams という曲で歌っている「これからの30年を変えてしまいそうな、これからの3年間をどうやって過ごそう」の答えを持っている大人がここに1人いました。

規模が違いすぎるから比較対象にもならない気がしますが、それでも、自分と、マサを、比べましょう。みなさんもぜひご一緒に。あえて、自分と重ねてみましょう。

たぶん1年おきに、マサはあのガッツポーズをひとつずつ決めながら、20年後の未来を作っていくのだと思います。本当に何かが実現する喜びを知っている人は、いつだって「今できること」をかたっぱしから見つけています。

そのくらいなら私たちにも真似できるでしょう。私たちも1個ずつでいいので、アイデアを実現してガッツポーズを。

POWER X。ぜひ皆様もご注目ください。

MOST LIKELY TO SUCCEEDのあの写真から20年たって、イヤーブックの1ページ。こんなに勇気をもらえる写真になるとは当時は思いもしませんでした。私もまだまだがんばらなくっちゃ!

 

去年、マサはZOZOの次期社長就任がほぼ確定だと言われている中、会社をやめて、新たにこのPOWER Xを始めました。このプロジェクトが好きすぎる私は、先日、根掘り葉掘り聞きたくて、パンデミック以来数年ぶりにランチしてきました。

「生徒会」とか、もう20年前だね、と、あまりのそのフレーズの響きの幼さに爆笑しながら。

「40歳前後ってさ、これまで積み上げた経験とかで十分生きて行けるから、みんなここから普通は保身に向かうんだよね。でもね、人生って短いじゃない?あと何年、元気にやって行ける?この先の、僕の20年30年をかけてできる仕事をしようと思ったの」

「世の中をよくできるデザイン、アイデアがあるとして、どうやったらそれを最大化できるかだよ」

「資金集めだけでも1年弱かかるでしょ。だから今から会いに行って話しておきたい人たちがたくさんいる」

「いつの日かこれが定着したら、当然1社だけが儲かるようなシステムじゃなくなる。現燃料システムで成立している会社などが潰れることになったら、反対されて実現ペースが遅れるのは目に見えている。だからみんなに今からスポンサーになってもらって、未来を一緒に作ってもらう。最終的にはおそらく、民営化じゃなくなるし……」

本当にすごい。おもしろすぎる。ワックワクする。希望が湧きました。

前時代のシステムを作った人たちが潰れればいい、という発想では、次のゴールが遠のく、ということを彼は知っているようでした。私がいつも言っている、問題解決の時にまず前提として目指すべき「みんなハッピー」って、本来そういう意味だった、と思い出しました。

これまでメディアがピックアップしてきた起業家、というものが、私はあまり好きになれませんでした(特にイーロン・マスクとザッカーバーグはいまだに好かん)。

おもしろがって成功者をヒーロー視するのは構わないけれど、大事なことが抜けている気がして。結果、利益を生む産業を作った人たちなのかもしれないけど、その理念は?人間性は?ビジョンは?

久々に、POWER Xのおかげで、わたしは、近い未来も遠い未来も、本当に楽しみになりました。私がお金持ちだったら全財産、投資して応援しちゃうね。ていうかないけど。初めて株を買ってみたいとまで思いました。どうやって買うん、株?


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