LOVEのひろいばなし Vol.48「ふわふわ vs ぬめぬめ」

公園の近くに、時々行くカフェがあります。
GW真っ只中、カップルやかわいい女の子たち、地元の家族連れが楽しく昼間からビールを飲んでいます。そのど真ん中で、私は今、ラップトップを開いたところです。
見渡してみると、やっと緊急事態宣言だのマンボウだのがない久々のGWを、みなさんおもいおもいに楽しんでいるみたい。
ていうか、犬。
右も左も、犬。
めっちゃ、犬。
オープンカフェの窓際、特等席側にはけっこうなスペースが空いていて、その理由がやっとわかったところです。彼らのためなのね。
レトリーバーは振りまくるしっぽでほうきばりに床をはいているし、小型犬も小型犬同士、おしりをぷりぷりさせながらキャンキャンと吠えてじゃれています。
トイプードルが定着しすぎて通常のプードルが巨大に見える昨今、そういえば、と思い出しました。私は生まれてこの方犬を飼ったことがないのです。
私が1歳児だった頃ぐらいまで、我が家には猫も犬もいたそうです。直後英国への移住が決まって手放したとか。そのとき、母があまりに寂しい思いをしたので、帰国後にまたペットを飼う気になれなかったと聞いたことがあります。大阪高槻の実家マンションの規定もあいまってか、その後の我が家には、犬猫を飼うというオプションは一切なかったように思います。
幼児教育としてもとても効果的だという、生き物との触れあい。命の尊さ、はかなさ、そして力強さ、生き物の多様さ、その面白さ。たくさんの子どもたちが早い時期から生き物と触れ合っては刺激を受け、生命の不思議を学んでいきますね。ペットがいなかったとはいえ、幼きLOVE子ちゃんも例外ではありませんでした。
母の友人、野々山さん宅こと猫のテーマパークで、初めて大量の猫をなでた5歳のあの日。
ふわふわのそれを胸に抱き、湧き上がる幸せに満ち満ちた「初めての猫に埋もれる体験」直後、多分その手で目を擦ったのでしょう。
「おがあだん、ゼー、目がかゆい、ヒュウー」
小さなまぶたはぱんぱんに腫れ上がったと同時にETの皮膚のようにしわしわになりました。さらに、のどはかゆく、息が苦しく。
「あはは、思いっきり猫アレルギーじゃん、かわいそー」
「目ぱんぱんじゃん、うわあ、かわいそー」
見渡せば家族全員が猫派の我が家。帰宅後に私の顔を見た姉たちのリアクション、誰も本気でかわいそうがってなかったと思います。
というわけで5歳以降の私の子ども時代は、犬は身近におらず、さらに猫は排除されていくという人生になりました。
むしろ、目が腫れても面白い、ちょこまかその辺をウロウロしていても目に入らない、何か言っていてもにゃあにゃあとしか聞こえない。ペットのいない我が家では、そんな犬猫の代理のような役割を、私が歳の離れた末っ子として担っていくこととなったのです。
しかし子ども時代の生き物とのふれあい、必ずしも犬猫である必要はありません。
今このカフェにいるトイプードル、ダックスフント、ゴールデンレトリーバー、巨大な名前もわからぬシロクマみたいな犬、トイプードル、トイプードル、トイプードル、トイプードル、トイプードル、トイプードル。これらに等しく代わるもの。
私のそれは。
主として。
虫、魚、でした。いや、等しくないやろ。
特に梅雨時期のナメクジ。彼らは本当に豊富です。通学路沿い、帰り道の田んぼ沿い。咲き続ける紫陽花。そこに生息し続けるぬめぬめ達、捕っても捕ってもいました。
小学校低学年ぐらいだった頃でしょうか。虫かごを持って家の下の公園に遊びに行った私はある日、この公園に生息するぬめぬめ達を全部根こそぎとってやると心に決めたのです。
理由など、ない。 そこに山があるから、山頂まで登る。
それと同じ。そこにナメクジがいるから、根こそぎとってやるのです。
……おぞましいご想像をされた皆さん、大丈夫ですよ。虫かごは、通常のサイズです。これいっぱいになることもなく。というか途中で飽きてしまい。小学生の私は、ナメクジ山のナメクジロードの、いうなれば3合目くらいで興味が尽き、目的を忘れ、適当に公園で遊んだのち、でもちゃんと成果は持って帰ったのでした。
自宅に着くと、虫取りの網やらなんやらの定位置だった、ベランダの室外機横に私はその虫かごを置きました。
マンションの6Fにあった実家です。ベランダはつながっていて、端から、子ども部屋と和室と両親の寝室、と並んでいました。それぞれの部屋の間にはエアコンの室外機がありました。
いつも母は真ん中の和室からベランダにでて洗濯物を干していました。そして、母の目線からは、室外機の向こう、子ども部屋側のベランダは一部死角になっていたのだと思います。
例の虫かご、蓋をしっかり閉めた状態のまま、時が過ぎていきました。梅雨でしたから、雨の日も続きました。数日たった頃でしょうか。やっと晴れた日。
「ちょっと、これ何……!」
母がおぞましいものを見た顔つきで私を探しにきました。
「……あ。」
数日降った雨が虫かごの半分まで溜まっていました。そして、ナメクジたちはどこへ行ったのか、まったく跡形がありませんでした。
えーっと、密室脱出マジック?
んなわけないでしょ!!と、うんざりする母。
彼らが液体化したことに気づいていながら気づかないふりをして、一連の流れを母に報告した私です。そして、ごめんなさい、これにはもう触れられません、無理。と、虫かごは母に処分してもらったと思います。
小学生のLOVE子ちゃんはその後、川でつかまえた小さなフナと、数年生きて巨大化した金魚を飼いました。
名をつけて、亡くなった時に泣いて、ちゃんと埋葬までしたのは、あの金魚だけだったかもしれないなあ。嗚呼、ちさとちゃん。土に還すために公園に埋めたのに、大事に大事に包もうと思って、ティッシュ何層も重ねて、最終的にアルミホイルで巻いてごめん。
あの小さなマンション裏の公園こそが、生き物との触れ合いのメッカであり、小学生の私にとっての全宇宙でもありました。
小さくて青いかわいい花、オオイヌノフグリを集めては水に浮かべ。
しろつめくさで花冠を作り。
それでもやっぱりナメクジを集め。
ちさとちゃんを埋め。
蚊にさされ。
砂場で砂鉄を集め。
セミの抜け殻を集め。
バッタを集め。
うんていの上をぴょんぴょん渡って足を踏み外し、股を大ヒットして幼稚園児にして初めての婦人科を受診し。
人生、色々あったけど。
あの公園で触れ合ったぬめぬめさんたちには感謝しています(どんなトーンでなんの話)。
そして、今、私は、初めてのふわふわさん、犬でも猫でもないですが、うさぎを飼っています。
歴代お世話になったぬめぬめさんたちには心底申し訳ないけど、ふわふわとの触れ合いは、ぬめぬめのソレとは比べものになりません。ふわふわの圧倒的勝利です。
当然みなさんそんなことは常識で、だからこそ今このカフェにはこれだけのトイプーが。ですよね。
読者さんの中に、もしお子さんがいらっしゃるご家庭の方がいらっしゃいましたら、いやもうここはぜひ。犬、猫などのふわふわさんたちを、ペットとしてお子さんが小さいうちから家族にお迎えされるよう、心からわたくし願っております。
じゃないと。
トイプードルだらけの素敵なおしゃれカフェにいながらにして、大人になったあなたのお子さん、ナメ山クジ子さんたちのことを思い出すハメになる可能性がございます。
多分、今、この平和な日本のGW。
ぬめぬめさんたちのことをこんなに詳細に懐かしんで文字にまでしている大人が他にいるでしょうか。
残り数日の大型連休。 昨日はこどもの日でしたしね。
ここにいる飼い主さんたち、ふわふわさんたち。向かいの公園に生息しているであろうぬめぬめさんたち。そして読者の皆様も。平和で優しい時間を過ごされることを祈っております。

知ってます?ナメクジって、泳げないんですってね。
あんなにぬめぬめしてるのに(私、笑ってます、くくく)。
彼らは陸上の生き物ですので、水中では溺れてしまうのだそうです。でもそのあと水に溶ける、とはどこを見ても書いてないので、あの日の虫かごから本当に密室脱出した可能性は、若干残っております。
さて。
Enough about NUME NUME,
Let’s talk about FUWA FUWA.
標語的に言っただけですが。
ぬめぬめ話は十分ですのでふわふわ話を。
あの、私、犬などと一緒に育っていないからなのかどうか定かではないんですけど、一個だけもうずっと公園を通るときにスルーできないことがあるんです。こう思わずにいられないっていうか。
どなたかを敵に回したらごめんなさい。
でもね。とりあえず、言うだけ言わせてください。
……犬なんだから、服、着せなくてよくない!!!!!!
15000円の!!服とか!!
着せなくてよくないいいいいいいいい!?!?
今は春だし、暑く...ないの?ハムスターに服着せないでしょ。うさぎにも着せない。猫も着せない。皮膚トラブルとか寒いとか色々理由がある場合があるのもよくわかっているんですけど。
都内の公園、すれ違うふわふわさんたちが全く服を着ていない日がありません。なんで犬だけこんなに服着てるのか、服を着ていないブルドッグを見た時のあの安心感はなんなのか。いつも考えずに公園を通り抜けできません。
ぬめぬめ界には絶対ないですもんね、服。
これが普通?「服が可愛いから」なの?「服着ている犬を連れている私」が可愛いからでは???と心の中で思ってしまう、これも犬を飼ったことがないからか、私のあまのじゃくをどうぞお許しください。