LOVEのひろいばなし Vol.43「感覚的違和感」

封筒が届いていました。

私はポストを開けて郵便物を確認するのに妙な抵抗感があるので、自分からは郵便でのお知らせ購読なども絶対にしません。だから普段あまり見かけない便物があると、すぐに気づきます。

おや、これはなんだろう、と封を開けましたら、先日ウクライナ難民支援に (超)ささやかな募金を送金した際の領収書がはらりと出てきました。

「あ、領収証か」

帰宅して、何の気なしにダイニングテーブルにその領収書を置いてお茶を入れようとしたところで、振り返って二度見しました。

なんだ、この、違和感は。

なにかが気になる。かすかに気持ち悪い。なんだろう。よくわからないけど、この感覚をとりあえず覚えておこう、とだけその時は思いました。

ダイニングテーブルの上の、UNHCRからの領収書。

そのままにしました。数日後、やっぱりなんだか気になるので試しに調べてみることにしました。

寄付をした人には全員に自動的に領収書が届くようです。へえ!そうなんだ!知りませんでした。職員の皆様、お疲れ様でございます。前も寄付したことあるけど、領収書のことはあまり記憶にないなあ。ていうか、ロックスターとしては(超)小額寄付の私めにも領収書を下さるなど、お手間を考えたら逆に申し訳ないぐらい。

その流れで、UNHCRのホームページをサーフィン。最新だと2020年の活動報告を発見しました。さすが、見やすいパンフになっている!

ふむふむ、この年の寄付総額は約58億円で、うち88%が個人によるものだとか。すごい!やるじゃん人類!やっぱり、個人の思いってちょっとずつでも集まるとこんなに沢山になるんだなあ。なんだか嬉しい。あとは残り10%が企業、2%が学校や団体かあ。へええ。

という寄付と、その8倍ほどの政府の拠出金などが合わさって、2020年は難民支援に充てられた、とのこと。すごい額だな。それでも足りないんだって。

おせんべい、ぽりぽり。

…消えない違和感。

ふと思いました。これは、国連がどうこう、領収書がどうこう、じゃなくて、なんとなく知ってたつもりのことの正体を実は知らない、自分に対する違和感なのでは?

おおお、そういうことか。俯瞰で自分のことが見えてくる気がしました。

そして、急に、私の周りに大量のパズルが散らばっているような感覚になりました。

ひとつひとつをよく見ると、それは、この1ヶ月、あちこちの国のニュースに毎晩アクセスして読んできた記事。かと思えば、大昔のNewtonで読んだ記事や、あの時観たドキュメンタリー。これまで蓄積してきた世界の情報が、ひとつずつ、ピースになっているみたい。もう何千ピースと散らばっています。

どう組み合わせれば、大きな絵が見えてくるのか、さっぱりわからない。

本当の世界は、どういう絵に、構図に、仕組みに、なっているのだろう?

これが本当にパズルだったら、なんて途方がないんだろう。

……やだあ!!めんどくさそう!!

続いて、パズルが散らばる部屋のセンター、どかっと座っているティーネイジャーが見えました。ちょうど国連で働きたいと思っていた、高1くらいの、若い私です。ひざがガバッ!と破れたジーンズ姿であぐらをかいて、紙パックのピクニック(ヨーグルト味)をストローで飲んでいます。懐かしい。高校の売店の横の自販機にあったやつだ。

「はーい、はいはい!質問があるんだけど」

いやな予感です。大人になった、なんとなく知ってたつもりのことの正体を実は知らない私に向かって、手をあげてます。ピクニックをチュウチュウしながら、大人になった私を、まっすぐに見上げてます。

この子、知ってる。しつこいんだよなあ。むぐぐ…。

悔しいかな大人になってしまった私は、この日から数日かけて、この子からの大量の質問に徹底的に答えていくことにしました。「なんで、なんでなんで」が、次から次へ、高速連鎖していきます。むぐぐ!大人の皆さん、以下、そらで答えられます?

ねえねえ、そもそも難民って何?

どっかから湧いてくる、みたいに思ってた時期あったんだけど実際どこから来るの?

で、UNHCRと国連って具体的にどういう関係?

そもそも国連って、なんであるの?

なんで第一次世界大戦のときにはなかったの?

国連軍って?最後にいつ戦ったの?

UNHCRの寄付額が1年に約58億って多いの?少ないの?足りてるの?

UNHCRの理事に女子サッカー選手とかもいる!なんで?

そもそもなんで「善意の寄付」などで難民問題を解決しなきゃいけないの?

ていうか、ロシアがなんで常任理事国できるの?

あ、アメリカも戦争してたよね?なんであれはOKだったの?

つかただの印象なんだけど、なんでアメリカっていつも若干偉そうなの?

常任理事国ってどうやって決まるの?

永世中立国ってどうやったらなれんの?

なんでまだ人類は1940年代みたいな戦争やってんの?

戦争で得する人っていんの?

でさあ、もう結婚した?

だんな、男前?

つかどこ住んでんの?日本?

…ちょっと、ちょっとちょっと。まず、お前さんはタメ口を直せやい。結婚してませんけど。ってそこはあなたと私の連帯責任ですけど。

というわけで、うろおぼえだったこともかたっぱしから調べなおしてみました。まだ答え切れていないものもありますし、きっと今後違う見解に出会ったら、またこれから変わっていく答えもあるかと思います。

ただ、この子からの質問の中でひとつだけ、大人の私としても心底共感するものがありました。1ヶ月前、「???」と、それこそ強烈な感覚的違和感を覚えたこと。仕事にかまけているうちに、忘れかけてたあの気持ち。

「なんでまだ人類は1940年代みたいなやりかたの戦争やってんの?」

友人数名も1ヶ月前、同じことを言っていました。なんでこのスタイルなんだろう。私も確かにそう思った。まさかとは思うけど、在庫処理?

そしてこの質問は次の質問に直結している予感がしました。

「戦争で得する人っていんの?」

ハッとしました。そして、これに答えられるかやってみよう、と色々調べはじめましたら。初めて知ることばかりです。世界の武器の売り上げを探していたら、とあるデータをまとめた記事に出会いました。

武器が1番売れるのはむしろ戦時ではないそうです。国と国が緊張状態にあり、防衛を強化したいときにこそ最新の武器がよく売れる、とか。確かに数字もそうなっている。へええ、そうなんだ。

で、2020年、パンデミックの混乱で世界経済が大打撃を受けたタイミングでありつつも、世界の軍事大手企業100社の利益総額はアップしています。

そのまま個別の企業のランキングを、じろじろと見てました。そしたら、いつもなら2秒でアレルギーを起こすところなのに、すすすーとリストの意味が浮き上がってくる瞬間がありました。

2020年、軍事企業の売り上げTOPランキング、世界ナンバーワンになった米ロッキード・マーティンは、約2兆円の売り上げ。数年前と比べると多少減ってはいるものの、この年のアメリカ経済に大きな貢献したそうで。で、上位5位の企業はすべてアメリカだそうな。へええ。

続いて、イギリスが6位。7〜9位は中国です。そして軍事産業上位国のうち、この年売り上げを落としたのはロシアとフランスです。

って、あれ。

ふとそれらの国を、並べ直してみました。

中国、フランス、ロシア、イギリス、アメリカ。

私はとても苦い気持ちで、同時に国連の常任理事国のリストを見ました。 中国、フランス、ロシア、イギリス、アメリカ。

なんだ、これ。 世界で武器を作り売っている国と、国連で平和をリードするポジションだったはずの国がピタリと揃ってる。これって、大人の世界では常識なんですか? 私が知らなかっただけ?これが国防であり平和のための仕組みだったということ?ちょっと意味がわからない。うすら寒い。

いや、もちろん他にもサウジとかインドとかリストには入ってますし。多分、まだまだ私がわかってないことだらけでしょうから、結論は出せる段階じゃないです。

でも、この構図を高1のあの子に、大人の私はどう説明してあげればいいんだろう。世界は大きな矛盾の中にあるのだよ、とでもいえばいいのでしょうか。震えます。

ていうか、5000円です。

ないよりマシかな、と思ったんです。

3月初頭、UNHCRはこのウクライナ危機だけでも2000億円を超える額が必要になる、と共同緊急アピールを発表しました。たくさん必要なんだなあ、と、とりあえずのつもりでしたが、なるほど、目標額自体、ロッキードマーティンの利益の10分の1という規模感だったとは。

イメージできてなかった。

急に、もし私のこの5000円を馬鹿にする人間がいたら許さない、と泣きたい気持ちでいっぱいになりました。

以前にクラウドファンディングで皆さんにご協力いただいた経験から、1円からでもその重みを私は知っているつもりです。それは、2020年UNHCRに集まった寄付も同じはず。

特に、そのうち88%。個人から集まったそれは、私たちが働いて、誰かにサービスしたり、食べ物を売ったり、何かを作ったり、書類を作ったり。そういう日々の労働から生まれたもので、武器を売って得たお金ではないはず。

現実にはどんなお金でも、買える避難所の水の本数は同じで、それが急務なのも変わらない。国連の職員さんたちがどれだけすごいことをしているか。絶対に必要なことをやっていらっしゃることを尊敬しているので今後も私は寄付を続けると思います。

ただ、もっと知りたくなったんです。国連と、UNHCRと、常任理事国の関係のパズルを、今の私では埋められないことがとても悔しい。ですが、これまでにはなかった解決や新しい世界の仕組みを提案する人やアイデアが今後きっと出現するはずです。そのときに、ピンとくる自分になっていたいです。

人間の予感は侮れないといいます。

動物的直感は薄れていても、感覚的に違和感を感じた時にはそれが身を助けることもあると言います。

たかが領収書ですが、時空を超えて、あの高1のあの子と会話することができました。多分これからの私には、いったんそれが必要だったんだと思います。

 

なんて話、「十五のお礼参り」のライブ会場ではできませんからね。MCで話す分量でも内容でもないっていう。

下北沢440、素晴らしい時間を過ごさせていただきました。ありがとうございました。

感覚的な違和感は、英語だと多分、red flagsと言うんだと思います。

いっぱいサインが出てたのにね。フラグがね。立ってたのにね。イケメンにやられてダメンズとしばらく付き合っちゃったりするのもアレですね。

国連UNHCRがいいだの悪いだのというお話でないことは伝わったかと思いますが、とにかくこの世界の作り、仕組みを、知りたい。

という、今日のひろいばなしでした。


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