LOVEのひろいばなし Vol.42「“ニンジャとか(笑)”」

ニコライ・ザボロスキ、ウクライナの詩人の言葉だそうです。
「心を怠けさせてはいけない ただ単に水をかき回してはいけない 心を働かせ続けよう 昼夜問わず」
英語ではよくEducate yourselfというけど、自分で自分を教育すること、成長を促すこと。ウクライナ語では、こんな素敵で的確なポエムになっているんですのね。これ、日本語で、ひと言でいうと、なにが一番しっくりくるのでしょうか?
慎二郎さんだったらなんと言うだろう、とふと思いました。
「言語」についてよく考える最近です。
急ですが、共同プロデューサの話をします。井上慎二郎さん。この数年、私の作品の急成長の影には、大量のビールとともに再会した大先輩(兼友人)、この方の存在があります。
自身アーティストであり、ギタリスト、プログラマー、アレンジャー、作曲家、作詞家、編曲家、エンジニア、プロデューサー……おそらく仕事の案件によってどこまで関わるかの差し引きがあるのでしょうが、とにかく技も能も高い方です。今まで世に送り出している曲は200曲を超えているのでは(半端ない!!)。ちなみに両利きでいらっしゃいます。両利きの人は天才肌、私調べです。
普段の言葉遣いもめちゃくちゃ面白いです。聞こえるか聞こえないかのギリギリボイスで、のらりくらりとビールを飲んでいるときも冗談か哲学かいつもどっちかわからないことを言う。面白い。センスってやつだと思います。
いよいよリリースになりました、新曲「Someone To Love」。
今回は英語詞です。1番の歌詞を書いたあたりで、「どうしよう」とふと不安になり相談しました。いつもなら、響きを生かしながら日本語の歌詞に変換していくのですが、今回はうまく行く気がしない。
本当なら日本の人に伝えたい曲だし、日本語がいいに決まってる。私、大真面目に悩んでました。「うん、確かに日本語つけづらそうなメロだよね」とリアクションが返ってきました。
慎「外国の人が好きそうな日本語一個入れるとか」
ぽそっ。
慎「ニンジャとか(笑)」」
……えっ?
ニンジャ?
しかも、「(笑)」?
先生がおっしゃるその「ニンジャ」、確かに音の響きがいい。メロにハマりそう。もしかして本気ですか……と聞くほうがナンセンスなので、とりあえずじゃあ「スシ」と「ハラジュク」以外でがんばりますね、と返しました。
とにかく、まったく私の視点が変わりました。
結局、「外国の人が好きそうな日本語選手権1位」を入れられたかどうかはわからないし、その後に慎二郎さんが「これでいい、これはだめ」などとジャッジするわけでもなかったのですが。私の無意識内にあったバイアスを、さっと外していただいたのは確かです。
「ニンジャとか(笑)」。
この慎二郎語が、私の川の中の置き石になりました。流れが変わり、思いついては流れて消えていく砂粒のような言葉の中から結局岸にたどり着いて歌詞になったのがこちらです。
「TOKYO 2022, I was here」
「東京二○二二年、我ここに在りき」
ここに、何かが宿った。魂が入った。それが伝わるのか、聞いてくださった皆さんも、ここでグッときた、涙が出たなどと言ってくださる方も多いです。
……ねえ。
プロデューサって。すごくないですか!!!
そもそも不安からスタートして、英語か日本語か、というチョイスしかない質問をしていたことが私の間違いだったわ!と今ならわかります。「日本語や英語」などの音声言語だけが言語だと思っていことも間違いです。そんなことより、もっと自分に聞かないといけない質問が他に100個ぐらいあって。それに一個一個答えていったら、ある日歌詞が完成し、曲が完成し、MVまで完成してました。っていうね。
さて、冒頭のウクライナのポエムに戻ります。
「心を怠けさせてはいけない ただ単に水をかき回してはいけない 心を働かせ続けよう 昼夜問わず」
慎二郎語なら、これをどう言うのだろう。
LOVE語なら、どう言おう。
そして、あなた語なら。
今週、世界情勢も平穏ではない中、「時にわたしたちは、不安がゆえに答えが欲しすぎて、聞く質問を間違える」を、私はまたも自分の中に、そして世の中に、あちこちで見かけまくっています。個人のみならず、大きな組織や、企業、テレビもラジオも報道局にすら、いろんなバージョンでそれを見かけています。
その前に、本当なら、先に自分に問いかけるべき別の100の質問があるかもしれない。自分の中の「なんでなんで」に一個ずつ答えるべく、知らないことを調べていくことぐらいは自力でもできるはずだったことをまた思い出しました。っていうかほんとバカだよね。すぐ忘れるよね。
とにかく、そこに至るために、今世界に、「ニンジャとか(笑)」って言って目線を変えてくれるようなプロデューサがいたらいいのにと思ってしまいました。WE NEED「慎二郎」。
実際の慎二郎さんはあくまでも音楽プロデューサですので、他に世界の参考になりそうな言語をお持ちの方を探しておりましたところ。
冒頭のウクライナのポエムを紹介してくれた方にたどり着きました。今キエフから毎晩生配信している大阪育ちの日本語ペラペラウクライナ人、35歳、ボグダン・パルホメンコさんとその科学者/学者でいらっしゃるおじいさまです。
おじいさまはウクライナ語を話し、孫のボグダンさんが関西弁風味の日本語に通訳されています。どうでもいい情報ですが、10代の時に好きだった人の話し方と似ています。って知らんわな。
彼らが話していている言語は、私もあまり今まで聞いたことがない新言語です。そりゃあウクライナを背負ってはいるけれど、個人の自由な発想に満ち溢れた独自のボグダンファミリー語です。それが日本語の文化と混ざって、オリジナルになっている。祖父も孫も、とても知見の深い言語をお持ちです。
「若さがゆえの話し方を、その時に忠告してくれた友人がいたんだな」とか「若い考えでも後押ししてくれた先人がいたんだな」とか、そういう過去すら聞こえてくるような言語です。
慎二郎さんやボグダンファミリーを見ながら、私も、ギターを練習するようにLOVE語を磨こうと決めました。もともと、言葉自体はわりと乱暴な私ですから、取り組みがいがあるはずだと。
日本語、英語、その他の言語。音声言語のみならず、手話などもそう。もっと広い意味で、絵を描ける人は絵もそうだし、それぞれの仕事も、人の生き方や姿勢など、その人のもつ表現力すべてが言語になっていくと感じている今日です。
よしこ語。ひろし語。LOVE語。
それがあつまって、多分ですが、また新しい日本語ができるはずです。
そして、その言語は文化になります。
文化は、必ずいつか、新しい国を形作ります。
さて、私たちがまず自分に聞きたい質問はどんなことでしょう?

慎二郎さん独特の「言語」なのですが、こちら言葉自体もスゴイのですが、「トーン」の力が半端ない。時にせせらぎと同じ周波数、かと思えば高田純次さんと同じ周波数、そして仕事終わりのビールと同じ周波数です。今、私が一番マスターしたいのは、私自身の言語の中の「トーン」のコントロールスイッチです。
そういえば、「トーン」がスゴイ人は、人に尊敬されている人が多いと思います。
ボグダン・パルホメンコさんのおじいさまは88歳の科学者。ソビエト時代にウクライナ代表として国連の議会にも立っていらっしゃる賢者さんです。彼の叡智は直接いただくのが一番です。3/23のゼレンスキー大統領の日本の国会のスピーチを受けてのYouTube生配信をおすすめします。
ちなみに、独自の言語をお持ち、といえば、エンジニアのニンニンさんこと服部さんもそうです。特に今回、この曲が完成するための、大きな置き石を彼にも置いていただきました。ベースの音像がそう。
その人が背負っている国、仕事、などの責任や義務もそうだし、マナーとか愛嬌とか、あとはたぶん学校以上のセルフエジュケーションによって培われたその人らしさみたいなもの、すべて言語だけど、何より、技術ってすごい言語だよね!!って思います。
さんざん精神論を書いておいてなんなんですけど、技術がいちばん強い言語だと思います。医者、仕立て屋、建設、なども言語だと思います。それが美しいかどうかはまた個人によりけり。
歌うように話す、愛が歌う、が私の言語です。15周年がんばるぞ。