LOVEのひろいばなし Vol.20「猩」

この漢字、読めます?私、さっきこの漢字を知りました。
当方、1年半越しのリリースパーティが控えていまして、そりゃあ、眠れません。ってそれは、覚醒の「醒」ですね。
さて、今カタカタとパソコンに向かう私は、リハーサル初日を終えた次の日にいます。でも皆様にこのひろいばなしが届くのは本番日なので、1週間のタイムラグ分だけテンションの差が出てしまうかしら?なーんて。
多分大丈夫です。なぜなら、すでに、「ライヴ前日!!」みたいな気分が2週間ほど続いている私です。犬でいえば、しっぽを振り過ぎて身の回りのものをなぎ倒し、ベロを垂らし、よだれがそこらじゅうに飛び散っている大型犬の有様です。とにかく嬉しい。バウバウ。ライヴ当日のほうが今よりよっぽど落ち着いているはず。というか、落ち着いていて欲しい。
初日リハ、みっちり全曲スリーピースアレンジをしたのでなかなかエネルギーを使いました。そして、久々の音合わせは震えるほど楽しかったです。夜、帰って1日分の演奏を聞いて、復習がだいたい3時間くらい。直しを考えたりメモをとったりし終えて、テンションが冷めないのでイヤフォンしたままお風呂に入ったのが午前2時。
3時ぐらいにベッドに入ったのですが、やっぱり頭の中で曲が勝手に流れ続けます。身を任せてふと時計を見たら朝6時。完全に交感神経の勝ち。これ、昔からそういうものだと心得ております。どうせそのうち眠くなって爆睡するので大丈夫。
ただ、この、ベッドに入ってから朝までのゆめうつつな数時間に脳みそが勝手に考えることが、意外とライヴに役に立つのかもしれないっていう。
昨夜の私は、布団の中で、足首をペコっとする練習をしていました。歌のアクセントと手元のギターのコードチェンジと足元のスイッチャーを踏むタイミングが絶妙にバラバラという難関箇所があるので、そのイメージ練習ですね…って練習になってんのかな。布団の中でペコっとしても、ねえ。
とにかくこの部分のリズムが似ているせいか、頭に流れる曲と並行して、脳が勝手にサンプリングして重ねてくるもうひとつの音声があったんです。こちらになります。
「オレタチ ニンゲン クウ」
はい、もののけ姫のショウジョウですね。
低い声、棒読みのリズム…ってもし「もののけ姫」を見ていない方がいらっしゃいましたら、「ぇえっ!」とだけお返します。先に進みます。
ショウジョウ=猩々、もともとはオランウータンの和名だとか。中国で3世紀に書かれた書物にも登場し、能の演目にも登場。人と獣の境目にあるような、そんなイメージでしょうか。というのを調べるにあたり、いま初めて「猩」の漢字に出会った次第です。美しくて不思議な字ですね。
まさに映画「もののけ姫」の中では、森を守ってきた猩々たちが、たたら場のために森や山を切り崩したニンゲンたちに住処を奪われた末、卑屈になってしまった姿が描かれています。体が黒くて、目が赤くて、不気味。
暗がりから、石を投げるんですよね。ニンゲンを恨む彼らは、瀕死状態の青年・アシタカを差し出せと、獣に育てられた山犬の姫・サンに迫ります。
「オレタチ ニンゲン クウ。ソノ ニンゲン クウ。ソノ ニンゲン クワセロ」
「森の賢者と讃えられるあなたたちがなぜ人間など喰おうというのか?」
「ニンゲン ヤッツケル チカラ ホシイ。ダカラ クウ」
「人間を食べても人間の力は手に入らない。あなたたちの血が穢れるだけだ」
もうほんとにね、名台詞だと思うわけです。その通りですよ、姫。
さて、そんなショウジョウの棒読み音声と自分の曲を脳内でマッシュアップしていた私はベッドの中でハッとしました。昼間、とあるツイートを見たことが、急に思い出されたのです。
そのツイートには動画がついていました。衆議院の映像で、バンザーイ、バンザーイ、バンザーイとたくさんの議員のみなさんが揃って大きな声で合唱しています。
「これ、パラレルワールド?ライブ会場では合唱禁止なの知らないの?」
そんな内容のツイートだったかと思うのですが、見た瞬間、ピクついた自分がいました。「そうだよ、私だって、『LIFE-grace-』をどれだけみんなで合唱したかったか」みたいな。そしてすぐ、ちょっとだけ悲しい気持ちになり、ただまあこんなのは別に大事なことじゃないと気に留めず、ご機嫌に1日過ごしていたんですね。
ところが「オレタチ ニンゲン クウ」をリピートしながら、その答え、というよりは“問い”が間違っていたんだ、と気づいたのです。
だって、あのツイートを見たときの気持ちの根底には「ライブハウスでは合唱が禁止なのに、衆議院でそれがOKっておかしくないですか?」という、問いがあったから。
この一年半、皆さんもそうだと思うんですけど、それぞれの場所でみんなで工夫してきたのって、仲間や同僚はもちろん、お商売をやってらっしゃる方はお客さん、そしてたまたまでも居合わせた自分と他人を守るための発想でしたよね。特に職場って責任が派生するから、大変でしたよね。お疲れ様です。私の職場というと、引き続き、RECスタジオ、ラジオ局のスタジオ、昨日のリハーサルスタジオ、そして当日の会場、もそれにあたります。いやー、そんな1年半を経た人として、私は瞬時に気づくべきでした。問うべき質問は、むしろこれ。
「そこ、職場として大丈夫ですか?」
職場から帰れば、彼らにも家族がありますでしょうに。
あぶない、あぶない。私、ショウジョウになるところでした。「ブッパーン!ブッパーン!ブッパーン!」の大絶叫や、皆さんとの大合唱ができるのならばと、そのチカラが欲しいあまりに。私、ギイン、喰っちゃうところでした。少なくとも、心の中で、暗がりから石を投げようとしてました。
「合唱するギインを食べてもギインの力は手に入らない。あなたたちの血が穢れるだけだ」
いやー、山犬の姫、ありがとう。その通りでした。気付けてよかったです。妙にホッとしました。これでのびのびと!「足首ペコっと」を本番でもばっちり決めてくることができそうです。
そうです、私たちは、心の中で暗がりから石を投げることもできれば、心のなかで『LIFE-grace-』を合唱することもできるのです。オンライン配信で続けてきたスタジオライヴのおかげで、今の私と皆さんは1年半分、テレパシストとしての訓練済みなのです。(私に限っては、ただのオレオレ・マイペーシストとして訓練済み、ともいえるでしょう)
会場にいらっしゃる皆さんも、マスクの中で「ブッパーン!」コールをしてもしなくてもいい。チョイス・イズ・ユアーズです。あふれる気持ちが、届く奇跡を、何度も、何度も、見て、見て、見まくるのがそもそもライヴという場所。
1年半越しのアルバム『Resonant Grace」リリースパーティ、大変お待たせしました。待っていてくださった皆様、ありがとうございます。ドラムス佐治宣英さん、ベース御供信弘さん、おふたりとも本当にかっこいいです。学生時代からの友人でもいらっしゃるので、音がとにかく仲良し。私は楽器を持ち替えーの、あれしーの、これしーの、スリーピースバンドセットを大変楽しみにしています。
“今夜”、お会いできることに心から感謝します。よろしくお願いいたします!

脳内ハードディスク容量のほとんどを、歌&演奏に使うので、この時期はとくに他のことをものすごく忘れます。もともと容量がないっていう噂も大いにあります。
よって、メモ地獄。
昨日の自分がデスクに貼ったポストイットが、今日の私の歩く道を教えてくれます。例えば、ミミズの字で「服」って書いてあります。衣装のことです。
まあ「衣装」って書くとかしこまりますからね。なんとなく、ちゃんとしなきゃってプレッシャーが。だから気合入れたりワクワクしたい時は「衣装」。十分に気合は入っているので逆にリラックスしたいときは「服」でいいのかも。文字面で気分を使い分け。
文字面って大事ですよね。
昼間のツイートで少しだけ悲しい気持ちになった理由は「ライブハウス合唱禁止」という、まさに文字面だけです。「逆にハミング天国」とか「うずうずし放題」とか。チケットに、「LOVEはめっちゃ煽ってくるのにかたくなに大合唱をあえてしない特殊プレイ代込み」とか書いておけばよかったです。
ちなみに、今日書いた言葉の中で、1番好きな文字面はやっぱり「猩々」ですね。新たに、獣/妖怪の息遣いを感じる「ハフハフ」とか「もふもふ」とかって読めたらいいのになと希望します。
漢字辞典で「猩」に他の意味がないか調べてみたところ「1.サルに似た想像上の動物。 2.オランウータン 3.あかいろ、濃い赤色」って書いてありました。すごい、色の名前にもなるんだ。オランウータン色ですね。
メモの通り、まだ「服」を決めていないのですが、万が一当日のおラヴさんが濃い赤色を着ていたら、ぜひ「猩色ですね!!」とリアクションしてあげて欲しいと思います…なんて読むかわからないんでアレですけど。しょういろ?オラン色?ウータン色?ハフ色?もふ色?
服はさておき、きっと当日のおラヴさんのステージはなかなかのもんだと思います。リハ初日、やりたいことが多すぎました。減らすかそのまま欲張っちゃうのかは今日の私もまだ知りません。多分、みなさんも「やれ」って思ってくれている気がするので、メモに「やれ」って書いて明日の私にバトンタッチしておきますね。
本当に楽しみです。全国から、全世界からどうぞ。そして、こっそりこのメルマガを読んでくださっている媒体の皆様も、久しぶりにオンラインでお会いできたら幸いです。みんな、元気かな。
以上、本番1週間前の私からのお手紙のような本日のひろいばなしでした。引き続きリハ、そして隙あらば個人練習に入って参ります。では、ステージで!