LOVEのひろいばなし Vol.16「ノンヒューマンたち」

恋愛感情は、明らかにないです。ただ、同じ空間にいて不思議とイヤな気持ちにはならないタイプ。いや、普通ならイヤなんだけど、この子ならいいかな、みたいな。
とはいえ長居されるとさすがにペースが崩れる感じはするから、シェアルームとかも、なしかなあ。申し訳ないけど、ここはさようならさせてもらう、でもいいですかね。恨みっこなしということで。じゃ、失礼します。
…って、もう7回言ってるんですけど。
私の部屋には今、1匹だけ、ハエがいます。
LOVEちゃんそれは水回りが、などと思った皆さん、そうではないのです。コバエじゃないです。そして今我が家は、すべての排水口からベランダ、観葉植物のポットや洗濯機の裏まで、業者目線で見ていただいてかまわないくらいありとあらゆる場所がぴかぴかなんです。ガチで掃除しましたから。除湿機つけているので、湿度も低いです。
この居候、1週間前から始まりました。毎晩丁重に「来世でな」とお別れを告げ、ティッシュでさようならする作業を7日続けているにもかかわらず、次の夜になるとまた、別れたはずの彼がいます。
日中は気配が全くない。夜、ベッドサイドのナイトランプをつけて、寝る前のネトフリ見る頃になって、初めて気配がするんです。
「え?ずっといたよ?」と言わんばかりの、壁の点。やたらくつろいでらっしゃる。危機感ゼロ。なぜか清潔感すらある。
ふと許しそうになります。あれ、私ちゃんと昨日別れたつもりなんだけど伝わってなかったかな、ごめん、まいっか、みたいな。
いや、違うから。あなたハエだから。しかも、この手で決着をつけているんだから、昨日の子とあなたは別人でしょう。何このシステム、シフト制?しかも全員、簡単に捕まえられるくらいにはリラックスしてるって、種としてどうなの。
映画のアメリみたいなプチ変わり者の隣人が、「しめしめ、こいつをいい気分にさせてから」と無駄に酒でも飲ませたものをおはしで摘んで律儀に1日1匹ずつウチに仕込んでるんだったらわかります。けど、それはない。となると、ただただ聞きたくなるのです。
なぜ。
やばいですかね。わたし何か幻を見てますかね。
ストレスかしらと確認用に写真にとりまして、「ほらまた今夜も」と母に送りつけてみましたが一応母の目にも見えたようです。笑ってました。
「いつまで続くか様子見てみたら。ほら、あなたの周りには不思議なことが起こるから」
いやそんなことないでしょ、と反論しようとして、急に、次々と記憶が蘇ってきました。そういわれてみれば…。これまでの、数々のノンヒューマンたちとの遭遇シリーズ。
まず、小6のアメリカ時代。
夏休みに子どもたちだけが送り込まれる3週間のサマーキャンプに行ったのですが、超山奥だったんですね。空気は素晴らしかったのですが、私が行った後の年に閉鎖になるほど老舗のキャンプで、昼夜ほとんど外にいるのと変わらないぐらいの野性味あふれるロッジでした。
寝泊まりしていたのは8人ずつの小さなバンガロー。全部で10棟ぐらい並んでいましたが、ある夜、我が#6バンガローに、なんとスカンクが。
「くっさ…!!」
猛烈な匂いに目が覚め、すぐに大騒ぎに。夜は懐中電灯しかないので姿も見えず、手当たり次第みんなでどんちゃんやって、追い出せたかどうかも確認できず。しかもこの頃の私はまだ英語も分からず「帰りたい帰りたい帰りたい。こんなキャンプになぜ入れたの」と両親への恨みつらみを筆圧強めで手紙に書いたばかり。絶望しながら布団にもぐったのでした。
あまりの臭さにろくに眠れなかったバンガロー#6の非力な我々に、翌朝「ここは山中だけど人がいるからスカンクなんて普段は絶対に来ないんですよ」と説明がありました。…いや、来たじゃん。
続きましては、上京した最初の家にて。 川崎市多摩区は生田のワンルームで遭遇した7色のトカゲ。
ベランダに置いていたハーブの寄せ植えに、ちょっと神々しい、美輪明宏さんのご親戚みたいなトカゲが来まして、これはとっても美しかったです。しかもその寄せ植えに住みついてくれたので、数週間、水をやるたびにキラッと逃げる俊敏なお体が大変優美でございました。
あんまり綺麗で小さくて可愛かったので、捕まえて部屋で飼いたいと思い、あるとき網を持って出た時点で、さすが美輪さんのご親戚、魂胆を見透かされており逃げられました。隠れるところもないのにどこ行ったかな、賢いなあと思ってあきらめたのですが、ついでにベランダの土を流しておこう!と水をくんでざああっと流した瞬間。ギリギリ排水口の内側にかくれていたらしい7色がきらりと光り、同時に深みへと消え去りました。
「はあああっっっ…」
声がでたあと、立ち尽くしました。
とにかくどこかで無事でいてくれたらと願いましたが、あれは悲しかった。美輪さん、その節は誠に申し訳ありませんでした。短い期間でしたがありがとうございました。
気を取り直しまして。
続いては、おそらく長年子どもたちににわやくちゃにされ、「もうこの仕事辞めたい」レベルで疲れ果てていた、つま恋パークの老馬です。
どうやらその日は‘観光客ガン無視作戦決行日’だったらしく、先を歩いていたうちの制作チームが話しかけても何をしても「見えません」「聞こえません」を徹底して宙の一点を見つめていたのに、後から歩いてきた私にロックオン、ガン見。フェンス越しに、ずーっとガン見。こっちが目線はずしました。
海にもいました。
高校の友人と鹿児島から屋久島へ大きなフェリーで旅行したときのこと。二人でデッキから大きな海を見下ろしていたら、並行して泳ぐまあまあ長くて大きな魚が。これには大興奮。しばらく船に寄り添うように泳いでいたのですが、イルカやクジラではなかったですね。あとから、リュウグウノツカイじゃないのと地元民に言われたけれど、違う、そんな龍みたいなのじゃなかった。もっとまるまるとしていました。縦にぎゅっと潰して、平たくなくなったマンボウが巨大化した、みたいなやつ。正体わからず。
そして、東京都内にもいましたね。
長年住んでいた、とある屋上のペントハウスなんですが…ってペントハウスというと聞こえはいいのですが、屋上の共同洗濯物干し場の横に追加建築された、コンクリの箱ですね。玄関を開けたらおばあちゃんが洗濯物を干してらして「おはようございます〜」から始まるちょっと変わったレアハウスだったのですが。
しゅたたたたたた!!しゅたたたたたたた!!
床下を走る何か。あれもなんらかの、でした。ものすごく早い。そして、止まるのも上手い。
昔、座敷童を見たといいはる知り合いが「めちゃくちゃ可愛かったよ、まったく害はないよ」といっていたので、やった!とうとううちにも座敷童が!と最初は喜んだのですが、違いました。
デスクで作業が終わって、テレビみようとして移動したら一緒に、しゅたたたた!!
よーしお風呂入ろうとしてドア開けたら、しゅたたたた!!
ついてくるって何。
駆除業者に相談しましたが、音の感じと家の作りからしてハクビシンなどこのあたりで報告されている動物とは違いますといい切られました。…じゃあ、誰。
名も知らぬその子は数週間ほどくつろいでいた模様。知らぬ間にいなくなってました。
あ、ちなみにこの家には小さなクモがいまして、その子は容認しておりました。クモが何年生きるのかは知りませんが、数年一緒にいたと思います。お互い、だいぶ愛着が湧いていました。人様が来ているときはほとんど姿を見せない。作業中には邪魔しない。けど、煮詰まっているとふと現れて視点を変えてくれる。礼儀のある優しい子でした(完全なる気のせい)。その名もスパイディー。
冬のある日、キッチンで洗い物をしていたら雪が降ってきて。
あ!雪だ、雪だ!と濡れた手で流しの正面にあった大きな窓を開けたら、窓枠にいたのか、洗剤を私がつけちゃったのか、詳しくはよく覚えてないのですが、とにかく向こう側にある大家さんの庭に向かって、空中を吹っ飛んで落ちていくスパイディーがスローモーションで見えました。
(スパイディィィぃぃぃいいいいー…ィ)
このときは声がでませんでした。洗い物を手にしたまま、茫然と。
完全に私が悪い。初雪が綺麗に降りしきる中での急なお別れに、このときは泣きました。何年も一緒に暮らしてきたのに…と。外は寒いだろうに元気でね…と。アホみたいですが、マジで涙を流しました。情緒がおかしい。
最後に、最新の遭遇は去年の箱根でした。
GO TOキャンペーンの時でしたね、母と2人でささやかなる温泉旅行をしました。時間制で露天風呂を貸し切りできるということで、それなら母も安心かと予約しました。お部屋で夕飯を楽しんで、やることないから宿の周りでも散歩してみよっか、コンビニへいこう、と降りてみましたら。
ロビーの入り口付近、お宿のスタッフさんたちがうろうろと、自動ドアを解除して、何やら外をみたりして騒然としています。
「今は出ちゃダメですよ!親子のイノシシがそこに!ほらすぐそこに!」
ってまさに目の前に、思いっきり野生のどでかいイノシシ。
初めて生で見ましたけど、大きいんですねえ。ふんがふんがしている母イノシシ、そしてその周りをちょろちょろしている瓜坊2匹。特等席で母としばらく観察しました。瓜坊、めっちゃ可愛かったです。
満足したところでホテルの裏口から出させていただきコンビニへいきましたが、帰り道もまた別の位置にて親子がふんがふんがしていたので迂回して帰りました。そういえばその時も、おもしろかったねえと話しながら部屋に戻る際に、「うん、まあ、あなたといると変なこと起こるから」と母が話していたのを思い出しました。いや、ほんとこれ全部たまたまなんですけども。
フラッシュバック、ノンヒューマンたち。
スカンク、トカゲ、老馬、つぶれマンボウ、しゅたたたた、クモ、イノシシ。
これまで遭遇したあなたたちを、こんなふうに一気に思い出す日が来るなんて。
嗚呼、人生って。
いや、じゃなくて、ハエ。
そうだった、ハエ。
これまでのノンヒューマンたちは、どれも特定の個体でしたが、今回の彼らの場合、毎日別の子が来ているんですよね。必ず1日1匹ずつ。増えません。
これほんと、どういう作りの連携なんでしょうね。できれば私としては早く全員と話をつけたいので、バイトリーダーみたいなのがいるなら出てきて欲しいです。
あと、もしこれが俗に言う‘虫の知らせ’ってやつだったらと思い、寝る前にちゃんと時間をとって考えたりもしました。しかし、今回ばかりは思い当たる節がありません。全っ然、虫からのお知らせごとが伝わってこないです。もしそういうことなら、メッセンジャーとして、ちゃんと仕事をして欲しいとすら思います。
もうしばらく、様子を見てみますね。
来るかなあ、今日も1匹。
もう、来なくていいんだけどなあ。

「何の話やねん」
大阪のスタッフさんがいってるのが目に浮かびます。
そのまんまです、ノンヒューマンたちとの遭遇の話ですよ。
まさにこの大阪のスタッフさんこそ、座敷童に会ったと言い張っている張本人です。現場は奈良のホテルだったそうです。
寝ていたら、天井に小さな穴らしきものが現れたそうで。 そこからぽこっと何かがでてきて。 どうやらそれが座敷童のおしりだったようで。
ぎゅううううううっ、うぅぅぅんんんっ、って一生懸命しばらくお尻をむぎゅむぎゅ穴に押し込んで、やっと、ッッッスポーン!!!と抜けて、どしーん!!!!と床に落ちてきたんだそうです。
「ふー!あいたたた!てへ」
てな感じで次の下のフロアへ向かったそうです。この間、スタッフさんは座敷童を気遣って、見ていないフリをしてあげたんだそうで、非常に幸せな気持ちになったとのことでした。さすが、奈良。
話を聞いた時、めちゃくちゃ羨ましかったです。いいなあ、不思議体験!
私はこんなにも会いたい、見たいと思っているのに、UFOもUFOらしきものも見たことないし、不思議体験もないし、街カフェで隣のテーブルにいる芸能人さんにも全然気づけません。上記に述べたノンヒューマンたちが全てです。
あ、もう1個あった。魚ネタでかぶるのではしょったんですけど、小4の時に大阪高槻の自然川の野外学習のときに、クラス中が「魚なんて素手でとれないよお」と楽しそうに水遊びをし続ける中、川に入っただけで気付いたらまあまあ大きなフナを踏んづけていて、うっかり即・捕獲してしまった、というあの時のフナも含みまして、以上が私が遭遇したノンヒューマンたちの全てです。(真面目か)
ちなみに厳重に注意しておきますが、座敷童?そんなものはいないとか、フェリーから見た魚も調べればなんの魚かわかるだろうとか、床下を走るのはたいがい〇〇、などと正義をかざしてくる輩は受け付けません。急にすみませんけど、「かっぱの街ではかっぱの銅像だって建ててるのに!私が座敷童の話するくらいいいでしょ!しゅたたたたがしゅたたたたのままで何がダメなのよ!!」と、平手打ちしたくなります。
もうひとついっておくと、「LOVEさん、ハエっていうのは」とかもやめてください。例え地獄の使いだとしても私は知りとうないのです。なんのためにこれだけの掃除をしたと。
ってまた思い出した!あるじゃんもうひとつ!(真面目か)
「1000日の夏」のミュージックビデオの撮影時、千葉の猿を忘れていました。あれもすごかった。
スピーカーで曲をかけ、撮影とはいえ本気で歌っていたらまず1匹。向かいの木を登ってきてしばらくこちらの様子を見て、枝を揺らして帰って行った。と思ったらもう1匹連れてきて、2匹でフィーバー。私も立ち上がってフィーバー。そのまま撮影続行。目もあってたし、歌っている間はずっとそこにいてくれたし、興奮&感動しました。そのおかげでミュージックビデオはあの表情になった、という訳です。虫の知らせというより、猿の知らせ感は大いにありました。猿はギリギリ、ニアヒューマン。
では、フラッシュバック、ノンヒューマンたち。まとめ直します。
フナ、スカンク、トカゲ、老馬、つぶれマンボウ、しゅたたたた、クモ、ダブルの猿、イノシシ。
以上です。ハエは入れたくないです。10年後にまたまとめなおしたら一体何が増えているんでしょうね。座敷童、入ってるといいなあ。