LOVEのひろいばなし #155「民意ってもはや何よ」

アメリカ、ジョージア州の話です。

日本では、最寄りの小学校で投票することがスタンダードですよね。そうするとだいたい徒歩圏内にある投票所ですが、さて、ここで想像してください。

もしあなたの住む都道府県で、投票所ががっつり数を減らされてしまったら?歩いて数時間かかる、もしくはバスを乗り継いでいくような投票所に、あなたは行きますか?

そしてやっと着いたと思ったら長蛇の列に12時間とか並ばないといけないとして。

その間、警察が執拗に「武器を所持していないか」と身体検査をしてくるとしたら?家には養わないといけない家族が待っているので、トラブルに巻き込まれたくはない。けれど、少しでも抵抗したら早々に公務執行妨害として逮捕されるかもしれなくて。

それでもがんばって耐えて投票しにいくために並んでいたら、「さすがに12時間は辛いよね、頑張ろう!」と水を配ってくれる人がいたんだけど、直後、県議会に「投票所で水を配るのは禁止」と嫌がらせのような法律まで作られてしまって。

っていうか、そもそもの投票用紙が、届かなかったら?

その期間だけ、なんと首相の命令で郵便局の局員数が減らされてしまっていて、郵便が届いてない人もたくさんいて、投票に紙自体が間に合ってなくて。

しかも期日前投票の期間も首相命令で短くされちゃったもんだから、よけいに混乱で投票に間に合わなくて。

それでもなんとかがんばって行った一部の人たちが投票した後、機械で公平に集計された選挙結果が、首相の党の「負け」だったばかりに「これは不正だ」と主張されたら?さらに首相があなたの街の都道府県知事(同じ党員)に、「足りない分の票を”見つけろ”」と脅しの命令をかけていたとしたら?

あげく勝手に「私の党が勝ちました」と根拠のない勝利宣言をされたら?

さらには首相が懇意にしているメンバーによって構成された選挙委員会にて、「次回からは我々の方で、機械集計の後に、手作業で数え直しますね」といくらでも意図的な操作が可能になる新しい規律が作られて。

そして、このすべて、首相があなたの街の人たちの肌が他より黒いことが気に食わないせいだとしたら?

ここまででも十分恐ろしい。けれど話はまだまだ終わらないのですよ。

最終的に、国全ての集計が正式に議事堂で認定される式の日。

責任者である人物こそがすべての不正の根源だとし、「議事堂まで歩こう、必死になって戦わなければ国を失ってしまう」という発言を繰り返し聞いて信じた首相の支持者たちが永田町の国会議事堂を襲う暴動が起き、警官を含む何人もの方々が亡くなったとしたら?

それでも、票数では半数近くの人たちが彼を支持していて「接戦だったのだから、それは民意だ」と信じる人がまだまだたくさんいるとしたら?

投票用紙が集計に間に合わなかった人たち、投票所に行くことをサボタージュされた人たちの「民意」は、この数字に含まれていないのに?

これがもし全てあなたの街で、国で起こっていたら、どういう気持ちになるでしょう?

……ご存知の通り、これ、すべて実際のお話ですね。ただし、首相ではなく大統領。共和党のトランプ元大統領が、2020年に民主党バイデン大統領に負けてから、まもなく11月に次の大統領選が控えている今に至るまで行ってきたことのただの羅列です。少なくとも私は、アメリカの歴史上レベル違いの異常事態だと思っています。

今年、彼は大統領経験者初の「犯罪者」となりました。いまいくつも抱えている裁判のうちのひとつ「不倫口止め料の支払い記録改ざん」は34件の重罪において有罪が確定。ただしトランプ氏への量刑の告知は、選挙に影響するからと延期になりました。

議事堂で亡くなった警官の遺族たちも、暴動を扇動した罪で彼を訴えています。

退任時、大統領室から国家機密に関わる書類を自宅に持ち帰った件では連邦捜査局に起訴されています(ベッドルームやバスルームに書類が散乱し、訪れた友人たちに自慢していた模様)。

ジョージア州含む7つの州で、敗北を覆すために「票を見つけろ」と高官を脅した件でも起訴されています。

……長々とニュース記事の引用みたいなことを読ませてすみません。なぜ私がこれだけアメリカ政治を注意深く見るようになったかというと。

いずれ日本にもアメリカの風潮が影響してくると確信しているからです。反面教師として学べる点を今のうちに徹底的に学んで防御しておかないと、超こえええと思っているからです。

だって、ここまでクリーンとは程遠いトランプ氏が、もう一度今年の選挙に出馬できたのって、共和党内の議員さんたちがそれでも「俺たちの中で一番勝利に近いのはトランプの知名度だよな」と思ったからでしょう。その発想自体は日本の政治にも大いに根付いていますもんね。

日本では今週末が選挙ですが、私は結果がどうこうというより、どういう結果になったとしても、「勝ったのだから正義」、「選挙の結果は民意」という主張が先に聞こえてくるようで、早くもそれに違和感を覚えているのです。民意って、もはや何よ。

アメリカも実は投票率が低い。原因のひとつは、白人の保守層は積極的に選挙に行きますが、今日書いた通り、異常なまでの有色人種および民主党員に対する嫌がらせもあって、いく気が失せている層や、行くこと自体がしんどい層が少なからずいるから。人権問題として、反吐が出るレベル。

一方、日本は事情が違います。まだかろうじて正常なシステム(外国人に選挙権がない点を問題と捉えた場合はまた別の話だけれど)。

近くの小学校で投票できます。郵便局員さんも減らされないし、期日前の投票の期間も確保されています。

だからでしょうか、ごめんなさい、前回「少し投票率が上がった!」ということですら、私は素直に喜べませんでした。「勝った者が正義」「これが民意」という考え方が、むしろ有権者に多いことにとても危機感を覚えたからです。まだまだこんなに投票率が低いのにと。

民意が反映されない選挙の構図。アメリカは、もうずっと異常な状態が続いています。なぜかといえば、ものすごく簡単に言ってしまえば、イラク戦争とリーマンショックのせい。政府が罰したり正すべきだった自分たちの方針や富裕層をスルーして、その代わりに財産や命をたくさん失った庶民層が政治にほとほと愛想をつかした結果が今なのだと思います。

「トランプにも一理あるよね」「せめて変化につながるよね」という風潮が生まれた。そしてトランプ氏が当選しました。本来は、トランプ氏のようなやりかたに一理もないし、変化なら他の方法でも十分に作れるはずなのに、です。

アメリカの例を「あり」にしてはいけない。お願いだから、日本はそうならないで欲しい。日本はアメリカの10年から15年遅れで空気感が揃っていく気がしています。トランプが一度は「あり」になって、支持者がまだまだ一定数いる中。今後、日本では何が「あり」になっていくのでしょうか。

統一教会や裏金問題で政治そのものにほとほと愛想をつかしそうになった、尽かした人もきっと多いでしょう。政治への信頼のなさが、何に繋がるかわかったもんじゃない。それが超怖えええのです。

今週末は、選挙にいくよね?一緒にいきましょうね!

〜おまけの話〜

アメリカ大統領選ギリギリの今月、ジョージア州の裁判所が「いや、機械の集計の後の手作業で集計やりなおしとか、許しませんので」とトランプ色の強い選挙委員会が都合よく作った新規則をビシッと禁止しました。ふー、危ない危ない。

でもまだまだ危ないことがありまくります。

合衆国法では議会やら司法やらも介入できない「恩赦」というシステムがあります。もしトランプ氏が再選してもう一度大統領になった場合、何が起きるか。

議事堂を襲った暴徒、有罪判決がおりて収監された(トランプ氏はあえて彼らを”捕虜 “と呼んでいます)何百名を、無罪放免にすることができます。そして、なんなら自分が抱えている裁判もキャンセルできます。各州法で訴えられている件は無理なはずだけど、合衆国連邦法で訴えられているものは、そのトップが自分なので、と自分自身を恩赦の対象にできる可能性があるのです。

もはや、やばすぎて、ちょっと頭が追いつかない。なんで犯罪が「まあいっか!」になるの?(って日本は法ではなく政治腐敗でOKになってるだけなのでもっとやばいけど)

ちなみにハリス氏が当選したとして、彼女は彼女でアメリカ政治の立て直しは楽じゃないはず。さらに元検察官なのだから、一点でも法律を犯したり不正をしたら通常の政治家以上に罪深いです。国民の信頼を裏切ることがあってはならないのですが、はたして大統領とか政治家って本当にクリーンなまま遂行できる仕事なの?と疑問に思う私もいます。

来週月曜日の28日、東京FMにて毎月最終月曜日に放送しているピーター・バラカンさんと対談式の「Message In The Music」が放送になります。まさにこの話をします。

いつも心掛けているんですが、メディアの一番の罪は「分断」です。

なるべく、日本でもよく知らずにトランプ氏を面白がっているような層や、その話を聞いて素直に影響をうけてしまいそうなアメリカ政治に明るくないマジョリティの人たちにこそしっくり届くように話せるよう、がんばってきます。って、これ、めっさ難しいよう!!

日本の選挙の翌日になりますが、結果がどうであれ、何かの役に立てるように話せるといいなあ。ぜひ聞いてやってください。


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