LOVEのひろいばなし #148「ジャコ・マフトリアス」

ドュイドュ ドュイドュ ドュ〜
ドュイドュ ドュ〜
ドュイドュ ドュ〜
ドュイドュ ドュイドュ ドュ〜
ドュイドュ ドュ〜
ドュイドュ ドュ〜
我ながら秀逸なベースリフを考えたものだと思います。さっそく、冒頭から自画自賛。 「Someone To Love」、イントロからアウトロまでこの曲の印象を決定づけるベースリフがどうやって生まれたのか。
ファンの皆様はご存知の通り、私はジョニ・ミッチェルを最も敬愛しております。彼女の音楽はとうてい真似できるようなものではありません。
というのも、ジョニはフォークからジャズへと移行を果たした珍しい例。簡単なコードでつらつらポエムっぽく歌うと思われがちなフォーク、と、リズムも旋律も複雑なあれこれで演奏するジャズ。
普通はなかなかクロスオーバーしないものですが、もともとジョニミッチェルはフォークとはいえどいくつかの変則チューニングを使いこなし、かなり独特の複雑さを持ったギター演奏をします。で、またまったく別のフロウ、一見アドリブかのように感じるほどの流動的なメロディーを乗せていくので、実は元々のアコースティックスタイル自体がとてもオリジナルなのだと思います。ボブ・ディランには申し訳ないけど、雲泥の差。
で、そんなジョニミッチェルがその後ジャズに傾倒していくにあたり、演奏のパートナーに選ぶのがジャコ・パストリアス。超絶ベーステクニックをもった、ちょっと狂気よりの危ういお兄さんです。後に麻薬中毒になり、全てを失い、ホームレスにまでなってしまう天才プレイヤーです。
そう、ジャコ・パストリアス、通称ジャコパス。彼の特徴は、フレットレスベース。
フレットレスベースは通常のベースと違い、音階が階段になってなくて、坂。なので、どこを踏んで上がるか下がるかはあなた次第、っていう楽器なのです。クラシックの楽器のように、綺麗にピッチを取るためには耳が良いプレイヤーじゃなくちゃいけない。けれど、その滑らかなスライドを生かして、自由自在に優雅な演奏をすることができるのです。
ジョニ・ミッチェル入り口で、ジャコパスのベースの虜になった私です。
いつの日かは「ジョニ&ジャコパス」スタイルに最も合う曲を作ろうと思っていました。
15周年の時、ギター、キーボード、ベース、ドラムス、各楽器と二人きりでライブをするデュオシリーズを行った際、ベースの真船さんとの二人ライブをやるにあたり、これはいよいよいい機会!ということで、当時の作曲タイミングで、私はベースラインから作ることにしました。
が!
我が家には、長年楽器テクニシャンのきくおから借りパクしていたYAMAHAのベースがあったのですが、流石に10年を超えたあたりから申し訳なくなり返却済みで、ベースがなかったのです。
じゃあ、ということでギターの低い方2弦、5弦6弦でなんかできないかなーと。
私の作曲の極意ですが、ほぼニセイタコみたいなもので。
いつものごとく、まず部屋を片付け、野暮用を片付け、「やらねばならない」ことが一つもない状態(まあ実際、1〜2つ忘れてるだけなのだが)を作り出すことから始め。
パソコンの電源を入れ、Pro Toolsを立ち上げ、トラック名は「Bass」と書き込んで、アコギを持つ。ぜんっぜんベースちゃうけどなと思いながら。徐々に私はベーシストになっていくのです。
「俺、今からジャコパスです」
(んなわけないだろ。ベースだってそもそもろくに弾けないだろ)
とは思いません。イタコですので。
しばらくジャコパス気分で、ギターを5、6弦に制限して色々試しながらそれっぽいことをやっては録音し、録音しては聞き直し、よければ良いでダメならダメで、あれこれやって
意外にすぐできちゃった覚えがあります。
ドュイドュ ドュイドュ ドュ〜
ドュイドュ ドュ〜
ドュイドュ ドュ〜
ドュイドュ ドュイドュ ドュ〜
ドュイドュ ドュ〜
ドュイドュ ドュ〜
いいやん。
お次の展開は、このアコギアコギした音を、シンセのフレットレスベースの音色で弾き直す直すことです。これで一気に嘘ジャコパス感が増します。
そっからは早かった気がします。
あとの展開はアコギで作っていきました。で、いつもメロディーは別途で作ったのかどうか記憶がありません。とりあえず弾きながら歌詞とほぼほぼ同時に歌って、あ、できたやん。と歌詞もメモった覚えがあります。
あ、できるなと思うときはある程度デモを作ったら途中で歌詞に行きます。歌詞が決まってくれればメロと、後半の曲の展開も決まるからです。
この曲の場合はつるっとフルで曲を書き、ドラムを入れてフルアレンジ。週末2日ほどぶっ通してデモを仕上げてプロデューサー井上慎二郎氏に送りましたよ、と。
「めっさやり甲斐しかないんですけどー。ちょっと、ちょっともう一回やらせて」
フレットレス5弦ベースを持って、スタジオレコーディングに現れてくれたベーシスト真船勝博さん。
どうやらやっぱりベースで作ってないからご苦労があったらしい。ギターなら指のスムーズに移行がスムーズに決まるところ、ベースになると大変らしい。真船さんの小指がこれでもかというくらい一音のためだけにジャンプしている。ごめんなさいよ。
かくして真船さんの技術、努力、これまたイタコイズムのおかげで、無事レコーディングは終了!ジャコ・マフトリアスが誕生したのです。
イントロから世界が決まる!めっさかっこいい!これこれ!
ラヴ・ミッチェル(おこがましいなおぬし)と、ジャコ・マフトリアス。
この機会にもう一度、聞き直してください、Someone To Love、2番のベースも鳥肌ものですので!
全体的に、基本的には私がデモで用意しておいたベースラインをめちゃくちゃかっこよくブラッシュアップしてくれた真船さんですが、お任せした2Aのかっこいいことかっこいいこと!!サビの解釈もお見事!!
からのエンディングです、やってくれました、ジャコ・マフトリアス!
ピアノが一瞬だけ少しブルージーな展開をする背後で「ディアだららららららら」つってジャコる瞬間があります。あれ、マフトリアスのオリジナル爪痕ですので!!
いい演奏が飛び出ると、ミュージシャンは笑う傾向があります。私も笑いましたし、後に一緒にライブで演奏するドラムスの佐治さんもこの「ディアだららららららら」のところで笑ってました。
1曲集中型、大変マニアックな話になりました。Twitterでこんなに音楽的な質問をしてくれたYOU、グッジョブ。2023年に「#ひろいばなし」で書いてくれてたのに発見が1年後でごめんなさいよ。
もしよかったら「#ひろいばなし」でこんなこと書いてほしいというリクエストあればいつでも送ってくださいね!