LOVEのひろいばなし Vol.143「未知との統合」

象の子どもが川に落ちる映像を見ました。ばしゃーん。あっぷあっぷ。

川にはワニやら何やら危険な生き物が潜んでいます。母親はこれを踏み台にしなさい、と自分の鼻を子象に差し出しますが、パニクってるわ状況が見えてないわで子象はただただ暴れるだけ。小さな崖ですが、かけあがろうとしても子象の足では滑ってしまってとっかかりがない模様。早くも溺れる寸前です。

ならば、と母親は泥の地面を足で削り、一段の階段を作ってあげようとします。まるで母親が子象を蹴落としているようにも見えるその様子を、周囲のシマウマが真顔の馬顔で、草をはみはみ、完全なる他人事として見ています。

さらに焦って、浮き沈みするたびに泥水を飲む子象。母親はまたも早めの決断で、今度は自らが川に入り、前足の間に子象を守るようにしながら、向こう岸に向かって歩き始めました。水の深さはちょうど小象の足がつくかつかないか程度なのでしょう。

それはそれで子象からしたら急な初めての挑戦。泳ぎ方を知らない上に、鼻を水面にあげて呼吸を確保するという象の生まれながらのシュノーケル能力にすら気づいていない子象は、母親の進むスピードに遅れをとりながらなんとか前足の間で見様見真似で泳ごうとします。

なんとか、親子は向こう岸にたどりつくことができました。子象は肩で息をしています。

……という、たかがインスタグラムの1分ほどの動画でしたが、私は息をするのを忘れていました。

あぶな!死ぬとこだったぜ、私が!!!くるし!!!

魚類が初めて陸へ進出した太古の昔を想像しました。どんな気持ちで陸に上がったんでしょうね。ねと、ねと、と。とりあえず最初は全部が意味不明だったでしょうね、魚類も。

ちなみに、向こう岸についた子象はやっとその足で立ちますが、自然の海やら湾やらを泳ぐオープンウォータースイマーが陸に上がったときのように、あまりの体力の消耗にフラッフラです。母親はそれでも川の近くは危険だから、と歩を進めます。休ませてもらえない小象はあぶなっかしく転げながら休む暇なく群れに合流すべく、七転八倒しながら進むのです。

いやあ、すごいわね、象の世界も楽じゃないのね。

でも何がすごいってこの象、生まれた直後ぽいのよね。立って泳いでついてって。立派だわね。

人間の場合はどうなるのかしらね。

……と私ここで気づくのです。脳内でなぜか北島康介がプールから上がって記者会見を受けているところが再生されました。

「なんも知らねえ…!!」

正確には北島が言ったのは「なんも言えねえ」ですね。金メダルをとった偉大なアスリートの名言を引用するのも甚だ使い所が間違っておりますが、あのくらいのエモーショナルなトーンで、今の私は自分の「なんも知らねえ」度合いに圧倒されてます。オカンデビューのあれこれ、マジでなんも知らねえ。

公式の方でご報告をさせていただき、ラジオからは「オカンブレイク」をいただくという言い方にして今いる場所に立っているわけですが、ほんとに何もよくわかっておりません。いちから一個ずつ、未知との遭遇をしています。むしろ川を渡る子象の心境に共感している自分がおります(母親の方に感情移入できないといけない気がする)。

そこに追い討ちのように「世の中」「大人の常識」が攻めてきます。「結婚するの?」と人に聞かれて初めて考えてなかったことに気づきました。え、したら何かいいことあるんだっけ?なんで?しなくてもいい?とか。次から次へとワニが。

もちろん友人の結婚や人様の幸せは、これまでも心から嬉しかったし涙が出るほど喜ばしかった!それは本人たちが心から望んでいたからだと思います。そしてめちゃくちゃ素敵なカッポーだなと思う時(友人のこともそのパートナーのことも本心から好きな場合のみですけど、笑)、涙が出るほど「出会いって宝ものですな〜」と私まで幸せになったモノです。だから本来はワニじゃないのに。

なぜ私は自分のことになると急に「結婚」やらなにやらがワニに見えるほどなのかがマジで自分でも謎。もしかしたら、それ自体の喜ばしさをすり替えてしまう、この業界においての「結婚」や「お子」にまつわるあれこれに違和感があったからかもしれません。

業界の方々が、アイドルでもないのに結婚報告やら出産報告をするのはなぜなんだろう。ワイドショーもそれ一色になるほどなのはなぜ。そしてなぜ必ずお相手が一般人か有名人なのかを記述するのもなぜ。そしてなぜ母になった女性陣は自分の体重は伏せるのにお子のグラム数は報告するのだろう。承認欲求の身代わりのようにすら見えるほど、なぜお子をそんなにインスタにあげる人がいるのだろう。これらの全て、とっても素直で喜ばしく見える人と、なぜか鼻につく人の違いは一体どこにあるのだろう。その明確なラインを知らずに、ファンの皆様にご報告してなんか地雷を踏まないだろうか。

四十歳前後の友人知人たちそれぞれの事情がある中、当然世の中にはいろんなタイミングでいろんな思いをしている人たちがいます。そんな中、音楽家が本職の私ですから報告なんかしてもしなくても仕事はやっていけますし、どうしよっかなーと思って、うちの社長に「ご報告って必要ですかね」と聞いてみました。

「ああ、世の女優さんとかもさ、アイドルじゃないんだしね、別に本当にどうでもいいっていうか、個人のことだからみんなとにかく好きにすればいいよね!ましてやあなたは音楽屋さんだし、どっちゃでもいいけど、ラジオ休むから言わないと皆さんを心配させちゃうでしょ。だから言えば?」と極シンプルな返事が帰ってきてとにかくホッとしました。せやな、と。

ファンの方々に「オカンデビュー」をお伝え申し上げた所、本当に報告してよかったと心底思った一点があります。いうて私も他人なのに新生命をここまで祝福してくださる人たちがたくさんいること、それがありがたくて頼もしくて嬉しくて。お祝いいただけること、本当に沁み入りました。自分の力にもなりますし、背筋も伸びますし、それ以上に、優しい世界をありがとう的な再確認になりました。

そうそう、皆さんからのお祝いのお言葉が、実は、以前から仕事でちょっと気になっていたことへの答えにもなったのです。

「子ども嫌いなんで。自分は独身だから子どもに税金使われてもメリットないんですよね」

っていう意見、聞いたことあります?

いや、友人にも子どもを好きじゃない人がいますしそれはそれで別物です。でもこれほどの「ご意見」ってのをここ数年時々メディアで見かけてて、そのたびに個人的にはものすごい狭い発想だなあとびっくりするんだけど、でもそれすら多様性の一部として尊重しなければいけない、というようなことをラジオ近辺で年々耳にすることが増えていたのです。

そのたびに自分のチームメンバーとは「何かおかしくないか」「わざわざメディア側がそういう声を取り上げることで”多様性”っていうラベルを使うのは違うんじゃないか」「それって本当にイコールなのか怪しいよね」などと会話をしてきたのです。こういう意見がどのくらいマイノリティなのか、私たちが思っているより多いのかどうかもわからなかったので、気になっていたんですね。

今回のことで再確認しました。

少なくとも私のことを知ってくださっている人たちが作る世界は、とにかく優しく頼もしいものでした。

それに私はめちゃくちゃ安心しました、そして励みになりました。

ていうラヴ界隈の世界は、例えばオータニさんを知る人たちが作る界隈の世界規模では全くないにせよ、それでも偉大でとっても素敵なことだと思ったのです。

で、この世界の外にはたくさんのワニはこれからも待ち構えている気がします。

子象も、母象も、アドリブかまして川渡ってましたけど、私も臨機応変にできたらいいなあと思います。未知との遭遇を繰り返し、ものを知らない新キャラを自分に日々統合していけるよう心がけてみます。これまでも分裂気味だった職や性格を統合して人格形成を心がけてきたので、このコンセプト自体には慣れてる……はず。

というわけで、しばらくお休みをいただきます。

またお会いできる日まで皆さまもどうぞご自愛くださいませ。

いつもいつでも、優しい世界をありがとう、です。

 

結婚への憧れといえば、やっぱり女の子ですもの、「一度はウェディングドレスが着たい!」みたいな気持ちは私にもありましたとも!で、着ちゃったんですね。

いつぞや大阪のラジオ番組のスポンサーでついていただいたウェディング会社さんの企画で、毎月いろんなショッピングモールでさんざんウェディングドレスを着てライブをさせていただきました。これが予想以上に関西色が強い企画でして。面白かったなああ。おかげで、ドレスにももう心残りがありません、笑。

週末のショッピングモール内のふきぬけの広場。疲れたお父さんたちが座ってる中、結婚行進曲が爆音で流れ、私は一人でドレスの裾を持ってベンチの通路を練り歩くのです。「ありがとうございます、ありがとうございます!」と笑顔を振り撒くと、勢いに飲まれたお客さんたちが「おめでとう!!」と声をかけてくれました。そしてその後ステージに戻った私はウェディングドレスを蹴り上げ、ギターをかつぎ、花嫁姿のままライブをするのでした。

直後のCDサイン会など、事情がわからぬまま居合わせたご老人などがCDをお買い上げくださり、「お歌、よかったです〜。ご結婚おめでとうございます、だんなさんは?」と祝ってくれたりしました。深くは説明せず、「ありがとうございます、だんなは今日はいないんですけど」などと適当に返事しておりました。

何着、着たかしらね、です。なぜか生着替えした回もありました。

ステージに試着室があつらえられ、中にマイクを持って入った私は「ほほう!意外とシンプルな作りであっという間に着替えができる!」などと実況しながらジーンズを脱ぎぬぎドレス姿になり、 たいそうなBGMとともに、自ら司会をつとめ「それではご登場いただきましょう!本日の花嫁、シンガーソングライターのラヴさんです!」などとフリをし、汗だくでカーテンをシャッと開けて出ていくのでした。今ならわかる。あれは関東では成立しないぞ。やったらやったで面白いかもしれないけど。あの企画を素直に受け入れて「おめでとう!」と囃し立ててくれる関西のお客さんのノリ、ヤジ風のお祝い。それが面白かったんですよね。

そういえばMV「愛に生きれば」の中でも、ウェディングドレス姿で浅草を猛ダッシュしておりますが、あれも面白かった。ゲリラ撮影でしたので、私とカメラを担いだ鏡監督だけがともにまず走り抜けます。そのあと、うちの社長とメイクさんたちなどが荷物を持ってゆっくりと次の合流地点まで歩いてくるわけですが。

社長が言ってました。すれ違ったおばあちゃまが「あらら、花嫁さん、逃げて来ちゃったのね。大変ね」と真に受けてたよ、と。いやー本当色々やったな、笑。

さて、新たなデビュー記念日を経て十七年目に突入いたしました。本当に長らく応援ありがとうございます。DCTrecords時代のデビューアルバムから3枚がサブスク解禁に。ぜひオカンブレイクをいただいているこの間も、LOVEの音楽とともにお過ごしいただければ幸いです。これからもどうぞどうぞ、よろしくお願いします!


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