LOVEのひろいばなし Vol.130「土木系アーティスト」

どうも、土木系アーティストのLOVEです。
小沢健二さんは?渋谷系!
椎名林檎さんは?新宿系!
LOVEさんは?
はい、ご一緒に!土木系!!
……果たしてそれは何系なんだっていうね。
いやあ、いかんせん土を盛ったり、ならしたりするんですわ。ほんで建設するんですわ。もはや音楽どこいったっちゅう話ですわ。
……で、何を作るの。
「草スキー」を作るんです。はい、え、なに、どういうこと。
相馬市の海沿いに完成した子ども公園、ここに震災を伝承できるなんらかのアートオブジェを作りましょうとスタートしたはずの企画が、「草スキー」の遊具を作るというまさかの新展開を見せております。本日はSOMA BLUE PROJECTの新企画のお話です。
今年の春、先だって行った高校生美術部員とのワークショップで、「次世代の相馬のキッズに何を残したいー?」と意見を聞いていたら、総合的に「海」がやはりキーワードだということがわかりました。
ただ、残念ながら津波対策で盛り土されて防波林も必要になったこの公園からは海が見えないことが気になりました。今年の春のワークショップのあと、私がとったメモには最終的に二つの矢印があって、それぞれ結論が○してあります。
「海が見える何か」
「海を感じられる何か」
まずやっぱ「海が見える何か」をトライしよう。ということで、たかーいところに鏡を作って、反射させて、潜水艦みたいに下からでも見えるような潜望鏡みたいなのを作るという名案(と自分で呼んでいた、笑)を検証したところ。
結論から言うと、実現不可能だということがわかり、視察に行った夕暮れの公園で、いい大人が数名「ちーん」とガチで落ち込んだ話は有名な寓話です。(ひろいばなし103話「SOMA BLUEボツ案」参照)。
いい大人、数名。ご紹介しましょう。
まだ土木系アーティストになる前のLOVEさんと、相談役こと我が事務所社長。そして去年のSOMA BLUE アート展を取り仕切ってくださった金髪クリエイターのいでさん。
そして今回監修に入ってくださっているヒロ杉山さん。80’sから大活躍のイラストレーター、ペインター、VJ、京都芸術大学の教授でもいらっしゃるのに、「ちーん」てなりすぎて、寂しげにギーコギーコとブランコに揺られてました。そしてヒロさんの会社の若手敏腕デザイナーで、SOMA BLUE markerのロゴをデザインしてくれたレディー、吉田さんも。
現地相馬からは、石附さん。恰幅のいい相馬市の建設業、相馬の復興に欠かせない人で今日ここライブの時からバリバリご協力していただいているナイスな親父さんです。そして石附さんに急に呼び出され、わけもわからず重い鏡を持って高いところに登らされていた銀行員、グリくんこと四栗さんです。計七名。
自信満々にできると思った潜望鏡がどうにも不可能で。できたところで想定していたより感動がなさそうで。そもそもここから海を見ようとしたら十メートルもの高さの何かを作らなきゃいけないこともわかり。で、こっから十メートルものオブジェ作ったら近隣のおうちの視界の邪魔になっちゃうから、もう無理な気配がぷんぷんで。
そりゃあ「ちーん」ですとも。ブランコ、ぎーこぎーこしますわ。思い思いにその辺の遊具で遊び始める中年たち。みんな無言だし。
腕が疲れて、道端に腰掛け、無の表情で遠くをみているグリくんは目が死んでます。私なんかもう「海が見える何か」に対する期待値が高すぎて、悔しくて、鏡以外のことを急に考えられないし。お腹まで減ってきたし。くじけてます、いじけてます。
おもむろに視界に金髪が入ってきました。公園の遠く、空いたスペースに人工芝が貼られているだけのなだらかな丘を見ながら、いでさんが言うのです。
「あそこ。草スキーはどうですか?うちの子もよく遊んでますよ」
「草…スキーね……十メートルも土を盛ってできるのかしら…きっと無理ね(背後でヒロさんギーコギーコ)。お腹減ったねえ……」
実に失礼ながら、その時は深く考えられず。今回はここまで、とお開きになった視察会は、その後みんなで市内に戻り相馬の皆さんと夕飯をいただき、翌日もまたヒロさんと高校を訪問したりして終了したのでした。
が!!!
いざ東京に戻ってからも相馬でリサーチしてもらっていたら、耳より情報が飛び込んできました。速報、速報!
市役所の方によると、現地の人たちが2020年の子ども公園オープン時に作りたかったけれど当時は予算が足りなくて作れなかった、それがまさに「草スキー」だったということがわかったのです。
そうなのか。じゃあ、直接海は見えないまでも、例えば「海を感じられる」デザインにして草スキーを作ることができたら、めちゃくちゃ喜んでもらえることが確定しているじゃないですか、と。しかも、今、「草スキー」って子どもたちの間で圧倒的人気ナンバーワンの遊具だとか。
「子どもが…喜ぶ…子どもが…滑る…青い…きゃっきゃと声がする…」
私の中の、子ども喜ばせ妖怪がヘラヘラと妄想をはじめました。
そう、この妖怪が出てきてくれたなら、いけるはず。プロジェクトは一気に「海を感じられる草スキー」という方向に舵を取り始めたのです(いでさんはお告げを届ける金髪の預言者だということもわかりました)。
石附さんが計測してくれたおかげで、地形を生かし、ある程度土をならし、草スキーを作った場合の近隣との関係も全てOKだと検証できました。
そして、予算。特に予算面は先にクリアしないと、実現可能かどうか判断がつかないところです。最初は「ゼロの数がちゃうな(爆)」っていう建設費用だったものを、がっつり最小限に抑えられる地形を生かした角度を追及しました。
結果、去年のアート展からの売り上げ(全額寄付!)、およびアート展に来てくださったお客さんの中からさらなる支援を申し出てくださった方々のおかげもあって、草スキーの基礎はある程度作れるメドが立ちました。やった!
「ここまで見えたならできる」と、いよいよ本格的に始動したのは、結局九月も中頃のことでした。
かくして、私は土木系アーティストの称号をいよいよ手に入れたのです。どうも、ドボッキーです(原型なし)。
さて、残る課題はあとひとつ!
実際は、「海を感じるデザイン」にするということが本来の高校生たちの思いを具現化する部分。ここが外せないわけです。ただただミニマムに人工芝を貼って草スキーを作ればいいわけじゃないので、そこの部分はどうしても予算がかさみます。
いろいろ考えました。そして、やっぱりもう一度クラウドファンディングに挑戦することにしました。来週、十二月十三日にページがオープンします。
高校美術部との連携もしっかり社長がとってくれています。ヒロ杉山監修、相馬に二校ある高校の美術部とのコラボで、子ども公園に、次世代に震災からの想いを伝承するための草スキーを建設します。
こちら、来年の春三月を目指して施工します。なぜなら!
二○十二年、最初に私が主催した「今日ここにいるという事」ライブからの文房具ギフトを受け取ってくれた、あの日の相馬の小学一年生が、高校を卒業するタイミングだからです。
震災から十二年、あの子たち、大きくなりました。 卒業祝いのクラウドファンディングだと思っていただければ嬉しいです。
相馬組も、東京組も。今日ここライブ以降、これまで協力してくれた全国のお客さんも。SOMA BLUE PROJECTに関わっている大人は全員がひと肌脱いでくれていて、みんなやりたいから一緒にやってくれた人たちしかいません。協力してくれている人たちも、企業も、一人残らず、そうですね。こんな健全なことはないと思いつつ、言い出しっぺとしては、ありがたくてありがたくて全員に青のり十二キロ配りたい気持ちで毎日を過ごしています。
私は、とても幸せ者です。
親愛なるひろいばなしの読者の皆様には、先にご報告させていただきました。 来週十三日、ぜひクラウドファンディングのページがオープンしたら、物語だけでも読んでやってください!よろしくお願いします。
ありったけのエア青のり(相馬産)を、テレパシーで送ります。
土木系アーティスト、ドボッキーより。

「ちーん」の視察の夜。相馬市内に戻って、魚/寿司居酒屋に入りました。
相馬駅からすぐの「青くじら」。大将が、サンボマスター山口さんのドッペルゲンガーです。それ見るためだけでも行く価値あります。本気で似ています。山口さんとおなじギター、ギブソンのレスポールを持たせたい。影武者いけるレベルです。
わいわいとうまい魚でヒロさんを囲み、ひとしきり意見交換は終了。といっても真面目っぽいこと話すのは最初の十五分だけ、あとはどんちゃんしながら与太話やら飛躍した妄想話をするだけですが、これが結局いつも役に立つのです。
で、最後の最後に漁師がいると強いなと思った案件が一つ。SOMA BLUE PROJECT共同代表の、漁師菊地さんも合流してくれていました。もう締めの寿司も食べてお開きかなってとこなのに。
菊「寿司、今日は魚、なにがあったの」
大将「あ…実はスペイン産まぐろまるまる仕入れたとこで。明日からやろうかと思ってました」
菊「それ、やらない?できない?」
大将「(エプロンを外しかけていた手を止めて)……できないことはないですが。やります?」
菊「らぶちゃん、まぐろあるって」
L「(なんで私よ)まじすか。まだまだ食べられますけど、つか大丈夫なんですか、そんなわがまま。明日からって大将言ってるのに」
菊「解体ショー!解体ショー!はい解体ショー!」
もはや、ただの勢いです。
大将も苦笑いしながらエプロンしめなおし。菊地さんの言うことには逆らえないらしく、カウンターの向こう、解体ショーが始まりました。
教えてもらいながら食べたのに、もはや覚えてないですが、聞いたことない部位が次々と。スプーンでこそいでいたあの部位なんだっけ……めちゃくちゃ鉄味が強くておいしかった!!
美味しいものと美味しいお酒をいただいていると、一体感が生まれるのは何故でしょうね。
「SOMA BLUE PROJECTはNPOでもないですし、LOVEさんも他メンバーも相馬市出身じゃない人たちがいますが、どうしてみなさんそんなに精力的に活動したり協力したりできるのですか、相馬のために?」
って東京のメディアに聞かれるとき、あんまり大きい声で言えませんけど「いや、単純にでたらめにうまい魚を食べさせてもらってるうちに巻き込まれるとこうなります」が、実のところ八割ぐらいは本気の本音です。