LOVEのひろいばなし Vol.114「子の可愛さ・人の可愛さ」

子どもって本当に可愛いですね。人の子もこれだけ可愛いんですから。親バカになるみなさんの気持ちも想像できます。あ、でも、ごく稀に、可愛くない子もいますよね。

っていきなり何を言うんだと。らぶさん、ひとでなしなんでしょうか。実際子育て中の親の苦労も知らずに、ねえ、ほんと。

当然ながら容姿のことを言っているわけではないですよ。角が立ってしまったらいけないので先に弁明をば。あくまでも個人の独り言として聞いていただければ程度のお話です。

あのですね。子どもって、子どもだからという理由ひとつで可愛いわけじゃないと思うんです。 V人見知りで挨拶ができなかったり、元気が良すぎてぐーで殴ってきたり、仕切り屋さんだったり、わがままちゃんでお膝からどこうとしなかったり、おしゃまさんだったり。そうやって、でこぼこと突出するそれぞれの個性がたまらなく憎らしくて可愛いのではないか、と。いくらでも各自突出していていただきたいな、と思うのです。

で、親御さんたちはだいたいいつも「挨拶しなくてごめんなさい」とか色々気を使いまくって言ってくださいますが、大体のことはまず大したことじゃないから本当に気にしないでください。

こないだも相馬のライブ終わりで、写真をとってください!と駆け寄ってきた女の子をお膝にのせてあげたら、持っていた祭りの金魚の水がうっかりダバダバ私のワンピースを濡らしてしまい。お母さんがこれでもかというくらいその場で娘さんを叱りつけ始めましてですね、びびった娘さんがもう私に直接謝れないくらい思考停止。服など本当に大したことじゃありません。むしろ、金魚の水が残っててよかったね!と十回くらいかぶせて伝えてみたけど伝わったのかなあ。あの子も可愛かったな。

とにかく、本当にみんな可愛いと思います。小さい人間の、それぞれの性格や優しさとわがままのでこぼこっぷりが、人として可愛いと思うのです。

本題ですが、そんな私には、一人だけ記憶に残る「可愛くない子」がおります。もう十年ほど前のことですが、五歳でどうしてそうなった、っていう。友人の結婚式で再会した先輩の娘さんでした。

同じテーブルに座った一同、懐かしい顔ぶれも楽しい最高の結婚式だったのですが、とにかくこの子の存在感がすごかった。

出会い頭から、なるほど姫キャラだなとわかります。テーブルに同席する大人も、一皿ずつ出される食事も、ひとつずつ値踏みをしているご様子。なんでその髪型なの。変な服。これまずそう。あれ気持ち悪い。あえて蔑むようなことを口にして大人の反応を見る、というのが彼女の会話術だったのです。

きっと成長途中にそういう時期もあるのでしょう。ただ、この子は何かしらブラックホール的引力がものすごく強い。まあでも五歳ですから、いうて可愛いです。しばらく様子を見ることにしました。

だいたいはそういう女の子を宥めるのが上手い男子がいたりして、うまく「姫と王子設定」などでやり切ることもできるんですけど、彼女はなかなかの強者だったのでしょう。とくに王子は現れず、自分の皿から何かを分けてくれる数名の女性達を「今日の下僕」認定しているのがありありとわかりました。同じ女として、若干怖い。

大人ばかりの会場ですから、寂しくないかな、大丈夫かなと一応一日私も目で追っておりました。テーブルでは普通に会話にできるようにパスも回していましたが、逆にそれが珍しいのか、なぜか毎回私は顔をガン見されるだけ。そして、対応がわからないのか、最後まで私だけ無視。地味に傷つきます、くすん。

最後、会場の中庭にて、ブーケトスの代わりのリボンゲームがありました。三十路の独身女性が並び、一応シングルということで五歳児も参加です。花嫁が持つブーケから伸びている数本のリボンの束から、それぞれが一本ずつ持ちました。

「このリボンが一本だけブーケにつながっているんだよ。それに当たったら花嫁さんの幸運を特別にもらえるんだよ。つながっているといいね」

人々が彼女に説明をするも、なぜかすでにブリッブリに怒っている五歳児。「いい年して独身のばばあ達となんで一緒にやらなきゃいけないの、意味不明」とな。

な、なんだと。二十五歳くらいの後輩が言うにしても、そんなセリフはもう漫画の中だけでしょう。五歳児に言われるインパクトたるや。

きっと母親が普段そういう言い方をしているのだなと察知した我々。いうて関西育ちです。基本的には十五歳くらいから「おばちゃん」キャラに若干の誇りを持つようにDNAができてます。ゲラゲラと笑う我々の間でぷりぷりしている彼女も同じく関西生まれ、そのうちそうなると思えば。司会の方の合図で、リボンをみんなで引っ張ることになりました。せーの。

五歳児のリボンがブーケにつながっておりました。まあ引きが強いこと。

司会の方も可愛らしい展開を囃し立て、何より新婦が嬉しそうです。三十路の我々もお互い血眼にならずに済んだと笑い、一同に平和な瞬間が訪れました。当の彼女は一気に注目を浴びてしまったことが恥ずかしかったのでしょう、天を仰いで「なんで私が」とうなだれ。いらない、いらない、と連呼していましたが誰もが拍手。プリンセスのように美しい新婦から大きなブーケを渡されると、とりあえずちゃんと受け取っていました。よかった、よかった。ブーケトスのあとは、中庭にみんなが出てきていっきに和やかなムードになりました。

そんな人ゴミの中で、一瞬のことです。

母親はまだ彼女を迎えにはこず、花嫁は立ち去り。談笑する参列者の隙間で、誰とも目線の高さが合わない彼女はその一瞬だけ本当に一人になりました。

素の瞬間でした。

誰かの注目を引く必要もありません。急に自分だけの空間に放り出されたような状態だったのでしょう。彼女はしばらくそこに無表情で立った後、見ることもせず後ろ手にぽいっとブーケを捨てて行ったのです。

そのとき彼女の中にどんな心模様があったかは、私もわかりません。ですが、ブーケを捨てるというその瞬間の姿に大きな違和感があったのです。私は心から戸惑いました。

一日憎たらしいとは思っていたけれど、可愛くないとは思ってなかったことにも気づきました。可哀想、とも言えるはずなんですけども、なんだかそれも失礼なような。

この子に限らずですが、承認欲求が特別に強い親、嫉妬心が隠せないほど強い親を持つ子。その後もちらほらと見かけるたびに、あ、似たような傾向があるのかな、と思うようになりました。あの日の五歳児は私の中で一つの基準です。

あの子も、遅かれ早かれ社会に出て自分を調整せざるを得ない日が来るのかも。もしくは、もうそのまま行くのかもしれないけど。いずれにしても、例えば私たち社会の一部になり仕事をする日だって来るでしょう。結局はみんなで自分の子も人の子も一緒に生きることになる。

ちなみに彼女の母親は相当癖が強い人ですが、彼女なりに必死なのも知っています。親が悪い、という安易な他人の論調が実際彼女たちにとって役立つとも思いません。

「可愛い」という漢字を見ていたら、「愛が可能。愛されることが可能。愛することが可能」と見えてきました。愛が許されている状態を「可愛い」と言うのか、と気付かされたような。

誰しも育て親の影響が強いことは間違いないけれど、私たちは必ず自分で自分を調整できるバッファも持っているはずです。やっぱり人としての「可愛さ」にはセンスや努力が必要なのかもしれない。私も、可愛いおじいさんとか可愛いおばあさんとかになれるといいなあと思うけど、本当になれるかどうかは自信がちょっとない。

嗚呼、人としての、可愛さ。

その元になる、子の可愛さよ。

愛を可にするところから、でしょうか。

 

今週、夏休み中ののっぴきならない理由で、スタッフさんが生放送の現場に四歳のお子さんを連れてきました。すみませんすみませんと言いながら。

トリケラトプスと、スピノザウルスと、ステゴザウルス、他数匹のお友達を連れてきたその娘さん。生放送中はブースの外にいるつもりでいたスタッフさんでしたが、その日のディレクターさんも「時々声が入るくらいのほうが夏休みらしいし、むしろ全然いいでしょう」と乗り気でした。

そうそう、そんな親御さん山ほどいるはずなんです。預け先がなくてどうしようもないとき、あるでしょう。そりゃあ職種にもよるんでしょうけど、ラジオとかメディアがそういう放送やってたら、何かいい波紋になるかもしれないですしね。

ちなみに、今回の四歳児はまだ幼かったですが、人として大変まともで可愛かったです。生放送中は声を押し殺してくれて、なんなら恐竜さんたちが起きないように寝かしつけてくれました。途中、トリケラ vs スピノ vs ステゴの対決もありましたが、負けたザウルスから紙製の風呂に入れてあげ、湯治までほどこしていました。そういうところだぞ、信頼できるのって。

この日も思ったんですね。子どもだったら誰でもブースに入っていいわけじゃないんだけど、この子は人として可愛いのだなと。そして、その愛を可な状態にしているのは、きっとご家族なのだなと。

親であるスタッフさんは普段の仕事っぷりをみても図々しいの真逆にいる人。ですから職場の仲間としても、その愛に加担させてもらおうかなと、気持ちよく可愛がりまくるというそんな心理が働いたように思います。

ちなみにこの日のディレクターは同い年で、結婚願望ゼロ、お酒とラジオだけがお友達、昼間はクソ真面目で夜はたぶんろくでなし、以前私がひろいばなしでさらしてやっと選挙に行ったあの梅澤ディレクターです。ボロクソに言ってますけども、根っこに優しさがあるかどうかは子どもの前での立ち振る舞いでよくわかりました。人の子も可愛がる能力も人間の一部なのだなあ、と感慨深かったです。


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